黄巾の章
第3話 「俺たちは、勝つ」
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ててください。狙いはつけなくてかまいません」
「わかった。鈴々! 桃香様! そちらもよろしいですね!」
「わかったのだ!」
「了解だよ! 兵士のみなさん、やっちゃってください!」
「「「応っ!」」」
その言葉と同時に、崖の上から落石と大量の矢が降り注いでくる。
「ぐげっ!」
「ぎゃっ!」
後続していた黄巾党の一部が、その攻撃を受けて命を落としていく。
「ちぃ! 急げ! 出口はもうすぐだ!」
「伝令! 前方に敵本陣! しかし、兵はおらず、黒ずくめ男が一人と少女が一人だけです!」
「ふん! 左右に全兵力を分けたのだ。おそらくただの伝令役だろう! かまうな、突進する!」
男がそう叫び、さらに前に出ようとする。
と――出口にいた男がニヤリ、と笑った、気がした。
「!?」
ゾクッとした悪寒と共に、男が足を止める。
しかし後続の仲間はその男を追い越して前方へと迫った。その瞬間――
「「なっ!?」」
ずぼっ、とめり込む音と共に前方の地面が落ち込んだ。
そして上に乗っていた仲間と共に、穴の中へと落ちていく。
「落とし穴だと!?」
その穴が開いた場所から亀裂が走り、今まで無事だったこちらのほうまで崩落していく。
「さ、さがれ、さがらねぇと落ちるぞ!」
男が崩れる足場から逃げ出しながら下がる。
それは、大きさが実に十丈(約三十三m)、深さが二丈弱(約七m)にも及ぶ大きな落とし穴だった。
ご丁寧に、穴の中ほどまできたら全体が落ちるように布と縄で細工してある。
それが渓谷の崖ギリギリまで広がり、完全に前方への侵入を遮断した。
しかも――
「ぎゃああああああっ!」
「ぐげっ……」
穴の中には尖った竹が埋められている。
落ちた数十人の仲間達は、即死した者、運悪く生き延びてもがき苦しんでいる者、助かったものの、上に登ろうとして転げ落ち、竹に刺し殺されるなど様々だ。
「ちい……」
男は、その細工に顔を青ざめ、後ずさりする。
だが、穴の反対側にいる、黒ずくめの男は笑みを湛えたままだった。
「本当は下に仕掛けた竹槍に糞尿を塗って、一時的に助かっても破傷風にして殺すのだが……まあ、今回はそこまでする必要もないのでね」
そういって右手を挙げると、左右の渓谷の陰に隠れていたであろう兵たちが現れる。
「まあ、もう手の打ち様がないだろう? 上からは岩と矢、前方には跳び越せない大穴。そして後方は遮断……諦めて死んでおけ」
そういった男が再度手を振り上げて、下ろそうとした。
「ま、まて!」
頭目らしい男の声に、黒ずくめの男の手が止まる。
「こ、降参する! さっき上で叫んでいた女が言ってたよな
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