黄巾の章
第3話 「俺たちは、勝つ」
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という我侭のために散っていく人たちの怨嗟と想いを自分の胸に刻むんだ」
「……はい」
「怨嗟も罵倒も一身に背負って……それでも力のない、戦えない民の代わりならば、勝利の他には選ぶ道など何もない。だから……」
盾二様が、前方を指差しました。
そこには昨夜の奇襲で怒り心頭となっている黄巾党が迫っていました。
「俺たちは、勝つ」
「はい!」
―― other side ――
「敵本陣を渓谷出口にて見つけました! 敵は、こちらが来たことに気づいた様子はありません!」
「けっけっけ……まさか自分達が攻撃されるなんて夢にも思ってねぇんだな」
男は下卑た笑いで剣を舐める。
現在、動ける兵は四千弱。
四日前の実に半数以下まで減ってはいた。
しかし、それでも相手は二千。
倍の数で攻めれば、二千程度など、殺し尽くしてお釣りがくる。
「よぉし……てめえら! これから俺たちを舐めきった奴らを殺して、殺して、殺しまくれ! 目を刳り貫き、耳を削ぎ、鼻をもいで周辺の各邑に送りつけてやれ! 俺たちを見縊ったやつらを殺し尽くすぞ!」
「「「オオオッ!」」」
男の声に、仲間の殺気が膨れ上がる。
その時だった。
突如、轟音と共に地面が揺れる。
「なっ、地震かっ!?」
「ち、ちがいます、後方を!」
男の言葉に伝令が。背後の渓谷の入り口を指差す。
そこには、渓谷の崖の上から落とされたであろう岩が、入り口を見事に塞いでいた。
「な……これは!」
「にゃーははははははっ!」
男の逡巡した声に、高笑いが響き渡る。
「だれだ!」
「鈴々は張飛というのだ! お前達、悪者をやっつけるためにここに誘い出したのだ!」
崖の上に立つチビの少女が高らかに叫んだ。
「ヤロウ! てめえか、こないだから舐めた真似しまくってたやつは!」
「ヤロウじゃないのだ、メロウ……でもなくて、鈴々は女なのだ! それに考えたのは鈴々じゃなくて、お兄ちゃんなのだ!」
「お兄ちゃん? あれだそいつは!」
「それは……」
「我らが主の一人、天の御遣いである、北郷盾二様だ!」
反対の崖の上から、黒髪の美人がそう叫んだ。
「お主らのような人の皮をかぶった獣は、殺し尽くしても飽き足らぬ! だが、寛大な主は『今ならば』降参すれば命だけは助けてやるとのこと! 潔く縛につけば良し! さもなくば一兵足りとて容赦はせぬ!」
「ざけんな! たかだか二千程度の義勇軍がでかい口を叩きやがって! お前ら、渓谷を抜けて回り込むぞ!」
男はそう叫んで渓谷の出口へと向かう。
「愚かな……朱里、予定通りでいいのだな?」
「はい、上から落石と矢を放って追い立
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