黄巾の章
第3話 「俺たちは、勝つ」
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ふざけんじゃねぇ!」
男は、伝令を袈裟懸けに斬り殺した。
「おめえら! ぐだぐだ慌ててんじゃねぇ! どうせ二千程度じゃこっちを全部殺せねぇんだ! 剣を取って戦え! 数で押し込みゃ、いくらでも勝てるだろうが!」
男の声を他の伝令が伝え、統制を取り戻していく。
だが、その頃には奇襲してきた敵は目的を終え、すでに陣から撤退した後だった。
「くっ……どこまで人をおちょくりゃ気が済むんだ、アイツらぁ!」
男が八つ当たり気味に、焼け焦げた柵の残骸を蹴り飛ばす。
「ほ、報告します! 被害は死人二千、負傷千五百、兵で戦える状態にあるのはおよそ四千です」
「……数があわねぇぞ。てめえ、頭にウジでも沸いたか?」
「は、それが……三千ほどいたほかの兵は……逃げ出しました」
「ちぃ、腰抜けがあ!」
「それと、ご覧の通り、柵や天幕などが火矢にて燃やされ……陣としての機能が失われています。幸い、糧食や物資などは無事ですが……」
「……やつらは」
「敵は姿を消しました……ですが、見張りが途中まで追跡し、敵の本陣らしき場所を見つけたようです!」
「ほほう……やつらの本陣ね。なるほど……なら、いっちょやり返してやるか」
男はニヤリと獰猛に笑うと、剣を抜いた。
「てめえら! やつらの本拠地がわかった! やられたらやり返す! 殺された仲間の分も含めて、奴らを殺し尽くすぞ!」
「「「オオッ!」」」
男の声に、殺気の満ちた声が合唱した。
―― 鳳統 side ――
「そろそろだな」
薄い霧が立ち込める、夜襲明けの朝。
盾二様と私は、本陣に構えたこの渓谷の出口で向かっているであろう、敵の全兵を待ち構えています。
「多少薄いが霧とは運がいい。それで仕掛けは、ばっちり?」
「(ばっちり?)はい、敵が渓谷の入り口に入ったら別働隊が岩を落として退路をふさぎます。その上から兵が矢と落石で攻撃。こちらへ向かってきたら……」
「あれでおしまい、か。我ながら悪辣なことで」
盾二様はそう自嘲しますが、私はぶんぶん、と首を振ります。
「そんなことありません。とてもすごいと思います。私たちの策に修正を加えて、あれだけの策を編み出すなんて……盾二様は、私たちよりも軍略に優れておいでです」
「それはお世辞だよ……俺は君たちよりもいろんな戦術書を読んで、実際に経験した戦法を使っているに過ぎない。君たちと違うのは経験の差だけさ」
「……それが、私たちに足りなかったもの、ですね」
「そう、だからよく見ておくんだ。俺と君たちが考え、実行した策で敵がどう傷つき、どう死んでいくのかを」
「……」
「見届けろ。人が自分の手で死んでいくという罪を。そしてそれを忘れず、自分の志
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