黄巾の章
第3話 「俺たちは、勝つ」
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ね?」
「わかっているよ。君たちに命の大切さを説いた俺が、早々に死んだら洒落にならないしね」
盾二様が、屈託のない笑顔でそうおっしゃる。
はわわ。顔が紅くなります。
「じょ、盾二様……お、おき、お気をつけて、くだしゃい、ね」
「はは、雛里。俺の、この服のことは昨日見せたろ? 心配いらないよ」
「そ、それでみょ、心配になりましゅ!」
「ああ……ありがとうな」
盾二様は、そういって雛里ちゃんの頭を撫でだす。
ああ、ずるい。
「わ、私も心配してましゅ!」
「あ、ああ……ありがと」
えへへ、私も撫でてもらっちゃった。
「……なんだこれ」
盾二様の呟きが、頭の上から聞こえてきました。
―― other side ――
くそっ! くそっ、くそ、くそ、くそ、くそっがぁあ!
「毎晩毎晩、昼と夜とでチラチラ、チラチラ……うぜえ蝿だな、こんちくしょうがぁ!」
夕陽が陣を染める頃、男はそう叫び、近くにあった槍を蹴り壊した。
こちらの陣に攻撃を仕掛けるそぶりを見せつつ、こちらが討って出ようとすると、さっさと退却してしまう。
にもかかわらず、日に二度、多いときは五度もやってきて、こちらが攻める様子を見せれば退却する。
そんな状態が、一昨日、昨日、そして今日と続いている。
「……いかがしましょう。皆、毎日の夜襲に夜も眠れませんが」
「けっ……どうせ仕掛ける度胸もねぇやつらだ! 今日の夜に敵が姿を見せても放っておけ! どうせ攻めてきやしねぇ!」
「しかし、万が一……」
「じゃあ、テメエが指揮を取れ! 俺は寝る! いいな!」
男はそういって自分の天幕へと戻っていった。
だが、その深夜――
「ほ、報告! 敵が、敵が――」
「やかましい、俺は寝てんだ! 殺すぞ!」
「違います! 敵が……本当に攻めてきました!」
「……! なんだとぉ!」
男が飛び起きて外に出る。
そこは火矢が飛び交い、柵が壊され、侵入してきた敵に仲間が殺されていた。
「……どういうことだ!」
男は横にいた伝令の胸倉をつかむ。
「は、はい。おっしゃられたとおり、今日の夜襲もたいまつが姿だけ見せて、しばらくして消えました。だから、問題なしと判断したのですが……いつのまにか敵が傍まで迫っていて、外で陣を張っていた仲間がどんどん殺されていったんです!」
「くっ……舐めたまねを!」
「敵はそのままこちらの陣へ侵入し、柵を壊して回っています。こちらは統制が取れず、やむをえずお起こした次第……」
「この、馬鹿がっ! 何でもっと早く起こさねぇ!」
「し、しかし、指揮は私が取れと――」
「それで手に負えなくなったから俺に任せるだと!
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