黄巾の章
第3話 「俺たちは、勝つ」
[1/7]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
―― 盾二 side 冀州近郊 ――
俺は、朱里と雛里に献策を指示する。
その言葉に、嬉しそうに応える二人。
「盾二様、戦略目標は敵の壊滅、でよろしいのでしょうか?」
朱里が尋ねてくる。
ふむ、なるほど……俺の意思を確かめているのだな?
「違う。『損害を少なく、敵の補給物資を鹵獲する』だ。この際、まずは名より実を取る。現在の糧食はもって二十日前後。多少の資金はあるとはいえ、武器や装備はないに等しい」
そう、俺たちの軍は『義勇軍』なのだ。一般の軍隊と違い、錬度も装備も最低レベルである。
「俺たち劉備軍は『仲間の被害を最小限に目的を果たす』ことを第一とする。ゆえに、まずは殲滅よりも事実上の勝利でいい」
「……わかりました。損害をできる限り少なく、となりますと……単純に敵を誘き出して一網打尽、という計はやめておきます」
そういう朱里の言葉に、愛紗が首をかしげる。
「何故だ? 誘き寄せて一網打尽なら陣に篭られるより被害が少ないと思うが」
「いえ、誘き寄せるためには、えっと、その、誘き寄せる兵の損失が激しいからです」
雛里のたどたどしい説明。
ふむ……
「それでも篭られるよりはいいと思うのだが……」
「確かにそうですが、この場合は殲滅することが目的ではありません。まずは兵を削ることが肝要かと」
朱里が、雛里の説明を引き継ぐ。
なるほど。出血を強いるわけか。だが……
「確かに出血を強いて兵を減らすのはいい。だが、糧食に余裕がないのはさっきも話したとおりだ。時間はあまりかけられんぞ?」
「はい、ですのでこの計は――五日で終わらせます」
そういった朱里の言葉に桃香たちがざわめく。
ただ一人、俺はニヤリ、と笑っていた。
―― other side ――
「なんだと?」
その男はこの近辺の黄巾党を任されている男だった。
ここは街道の交差する地点であり、各地の黄巾党の仲間への物資の搬送や、情報の伝達などを主任務としている。
「ですから……こちらに向かって義勇軍が迫ってきていると」
「そんなのはわかってんだよ。その人数がどれくらいだって?」
「は、二千程度、と……」
「ばかばかしい」
男はそういって呆れたようにため息をつく。
「こっちは一万もいるんだぞ? 二千程度でどうこうなるようなもんじゃねえだろうに。よほどの馬鹿が率いているんだろうぜ」
男の嘲笑に、その場にいた仲間もギャハハ、と笑う。
「かまわん、四千程率いて潰して来い。たかが義勇軍、全軍出るまでもねえ」
そういった男だった。
しかし、半刻後――
「ああん? 戦う前に逃
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ