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翡翠のエンヴレイム
第一話「始まりの出会い」
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化け物の表情に変化は無い。
 そんな戦闘シーンをよそに彼は周囲を見渡した、もしも、仮に特撮モノの撮影なら周囲にカメラやいろいろな道具があってもいいはずだ。
 それに、先ほどから人一人見ていない、いつもなら、いつもならこの時間帯子供達や買い物帰りの主婦が居るはずなのに。
 彼女は化け物が繰り出した大振りな攻撃を跳躍して回避すると、ようやく彼の存在に気が付いた。

「ッ!?ちょっ、逃げなさい!!」

 焦った表情を見せながら吠える彼女、化け物は大きな瞳をギョロリ、と動かすと掌を彼女に向けた。
 人を握り潰せる程に大きなその手の前に怪しげな光が浮かぶ、周囲を雲のような靄で囲み、中央の光からカシャカシャと音が聞こえてくる。
 彼女はその音を聞くなり舌打ちをして化け物の方に視線を向けた。

 だが彼女の判断より先に化け物の術の方が早かったようで、その光の奥から現れた鎖に対処できず少女は無数の鎖の突進を喰らい、所有地を囲む塀に強くたたきつけられた。

「あぐっ……ッ〜〜!!」

 塀に皹が入る程の勢い、砂埃が舞う中彼女は苦痛に顔を歪ませながら、歯を食いしばり。視線を彼の元へと移した。
 鎖は彼女の動きを封じるように素早く身体に巻き付いていく。
 化け物は掌の前に展開された靄と光を消すと地面を蹴り“彼”に襲いかかった。
 大きく体を揺らし3D映画では体験できないくらいの迫力を彼に与えて、その足が地面を踏むたびにズン、ズンと音が鳴り彼の体を小刻みに揺らす。

「くっそ……!!こン、のォ〜〜ッ!!」

 このままじゃ死ぬ――。

 急いでこの鎖を引きちぎろうとするも鎖はビクともせず、束縛から逃れられそうには無い。
 少女は力による抵抗は無駄だ、と諦めると左手に意識を集中させて、“その名”を叫んだ。


「紋章・解放(リエン・エンヴレイム)!!」


 すると彼女の左手の甲が薄紅色に光りだして手の甲に紋章のようなものが現れた。
 翼、月、十字架、それらによって描かれたどこか神々しい印象を受けるその紋章、その紋章から薄紅色の炎が噴き出し、ソレは彼女の体を包み込んだ。

 現れた炎は彼女を縛っていた鎖を跡形もなく焼き消すと次に“彼”に襲いかかる化け物に向けて勢いよく飛翔した。
「ガバゥッ!!!」
 化け物は背後から迫りくる聖なる力に反応し振り返る、炎は既に化け物の懐にまで接近しており回避は不可能だった。

 轟、と音を立てて炎は化け物の巨体を飲み込む。

 苦しむように暴れる化け物を余所に彼女は彼に近づいた。
 その表情は物凄くムスっとしていてきれいに整った顔が台無しになるくらいだった、彼女はその表情を崩さずに口を開き、イライラを抑え込むように言った。


「あんた……、なんでここに居んの
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