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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第三十六話 聖戦の激闘
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ている今のラインハルトの攻撃を真っ向から受けるのは危険すぎた。
いや、実際には可能かもしれない、が相応のリスクを背うこととなる上に僅かでもミスを犯せば今以上に危険な状況に追い込まれる。槍は投げ放たれたものなのだ。故にこの一撃さえ防げば、次の大技を放つのには時間がかかる。

「ほぅ……」

「負けるか……ッ」

少しずつ、少しずつではあるが槍が震え、反らすことに成功する。だがその選択は間違いだったかもしれない。何故なら、

「言ったであろう、加減はせんと。前だけ見ていては後ろを取られるぞ」

「なッ!?嘘だろ!!」

瞬間、槍とぶつかる正面を除いた全方位から杭が迫る。それはヴィルヘルムの杭に他ならない。だが、そんなことを知らない蓮は驚愕するしかない。髑髏の兵団よりも単純なものではあるが直接的な殺意と単純な初速の速さにどうしようもない状況に追い込まれる。

「私が何時、愛児等の能力を一端しか使えないなどと言った?愛しき我が爪牙だ。使いこなすことは指揮官としての義務であろう」

とても間に合わない。今、槍以外へと気を逸らせば聖槍はその隙を容赦なく突くことだろう。かといってこのまま槍にのみ気を取られれば杭に串刺しにされる。

「だから……来いッ!」

負けてたまるかと、負けるわけがないと信じる。たとえラインハルトがどれだけの戦奴を従えようとも、支配と隷属の関係に俺たちは負けないと。力を貸してくれと、自身が信じて止まない(レギオン)を見せてやろうと。

「櫻井、司狼、ミハエル、アンナ……」

爆ぜる黄金の破壊と夜の深き闇の中で彼は吼える。ここに集まれ、と。カッコつけた台詞なんていらない。ただ、俺の(こころ)をそのまま伝えたい。だから、
聖槍の輝きが絶頂を迎え、杭が彼に触れるその寸前――――――

「一緒にぶっ斃すぞォッ!!」

その瞬間、ありえないことが起こった。少なくとも彼、ラインハルト・ハイドリヒにとってはありえないことが。全力で放った槍を前に、そしてそれすらなお超えようとも押し潰さんとばかりに放たれた杭を前に完全に、そう、それらが完全(・・)に防がれた。

「――――――く」

ラインハルトの全力を防いだ。馬鹿な、ありえんだろう。そんなこと。過去、必殺を期して逃したことなど一度もなく、その時であろうとも全力など放ったことはなかった。故に、だから、だろうか――――

「く、は―――」

よく分からないものが口から洩れる。もちろん、それが何なのかは知っている。当然、それをしたこともある。だが、それとは違う。それは初めての感覚なのだ。

「くは、はは、は……」

初めてゆえにか、うまくいかない。この気持ちを表現したいというのに、これでは嗚咽のように見えてしまう。いや或いは嗚咽
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