暁 〜小説投稿サイト〜
東方守勢録
第四話
[1/4]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「……」


牢屋の中、俊司は深夜だというのに眠れずにいた。

何もしゃべらず一人でいると、脳裏に浮かび上がってくるのは仲間のことばかり。皆を逃がすためとは言えど、勝手なことをしてつかまったことは事実。心の隅では自分を責める自分がいた。

特に気になったのは、別れるまでともに行動した仲間のことだった。最後まで自分を引きとめようとしたレミリア。自分が倒れるかもしれないのに、能力を使って助けようとした鈴仙。引き止めたいという自分を抑えて、笑顔を返してくれた妖夢。その他にも、あの場にいた誰もが悔やんでいないか、心配で仕方がなかった。

それに、協力を求めてきた文のことも心配していた。自分があんなことを言わなければと、自分を責めていないかが心配だった。

だが、この中にいる限りはなにもすることもできないし、皆を安心させる手段もない。

俊司はただ無意識にため息をつくしかできなかった。









捕虜監視室前


「……よし」


扉の前では、スタンガンを持った由莉香がたっていた。彼女の周りには、気を失った二人の兵士が倒れている。

由莉香は男たちが完全に気を失っているのを確認した後、ポケットから奪取したICカードを取り出し、カードリーダーにとおした。


『カード認証完了。ロックを解除します』


アナウンスとともに扉が開く。

中に入ると、すぐ近くで扉が開いたというのに、何も疑うことなく背中を向ける一人の兵士がいた。


(ここの監視員は一人……だったらこのまま!!)


由莉香は全速力で駆け寄っていく。


「……ん?」


男もさすがに不審に思ったのか、ふと後ろを振り向いていた。だが、すでに走り始めている彼女をとめることはできない。


「くっ!」

「なっ……うぎゃあ!?」


男はまたしても変な奇声を上げながら倒れこんだ。


「鍵……あった!」


由莉香はそのまま男が持っていた鍵を奪うと、また走り始めた。












「……なんだ……今の?」


突然の奇声に俊司はポカンとしていた。それに俊司だけでなく、眠りについていた咲夜達も目を覚ましていた。


「なにか言った? 俊司君」

「いえ……いきなり外から奇声が……」


と言って俊司は外を確かめようと、鉄格子に近寄っていく。

あたりを見渡すが何も見えない。と言うか、見える範囲が狭すぎて何が起きてるかわからなかった。


「何かあったのか……ん?」


よく耳を澄ましてみれば、微かだが足音が聞こえていた。それもどんどんと大きくなり、近寄ってきている。


「誰か……来ますね」


[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ