第百二十一話 四人の想いその三
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だがそれでもそこにかなりのものを、今日も見て言うのだった。
「戦も上手じゃ。若し当家と戦えば強い敵になるな」
「上杉や北条と共に」
「そうした相手になりますか」
「間違いなくなるであろうな」
このことは確実だと言えた。
「人も揃っておるしな」
「人は城、人は石垣と御館様が仰っていましたが」
「まさにその人もですな」
「織田家には集まっていますな」
「それも日増しに」
「中でも羽柴秀吉とかいう」
この男のことを意識せずにいられない幸村だった。
「百姓から十万石取りの大名になった者だが」
「十二万石だとか」
霧隠がその石高について言う。
「それだけの禄を貰っているそうです」
「十二万石、そう簡単には貰えぬ」
「しかも百姓あがりですから」
「相当な者であろうな。しかもその他の人材も多い」
「織田家、このままでは手がつけられぬかと」
霧隠はあえて武田家にとっての危惧も口にした。
「どうにかしなければ」
「御館様、二十四将の方々がおられるが」
「そして殿も」
「わしはどうということはないと思うがな」
自分をそこまで高くは思わないのが幸村だ、これは慢心をしない彼の性格がそうさせるものである。だが彼は十勇士達にはこう言う。
「しかし御主達天下一の忍達がおるがな」
「いや、それこそ言い過ぎですが」
「我等が天下一の者達とは」
「幾ら何でもそれは」
「ありませぬ」
「いや、風魔小太郎に服部半蔵に」
そうした名前が挙げられていく。どれも日の本にその名を知られた忍達だ。
「ああした者達とも決して劣らぬわ」
「我等はですか」
「一人一人が」
「その御主達がいてくれる。それだけでもかなり違うがのう」
だがそれでもだった、織田家に関しては。
「何もかもが大きくなり立派になった」
「まさにですな」
「そこまでになりましたな」
「うむ、強い」
そうなったというのだ。
「それは兵の強さではない」
「数ですか」
「それですか」
「数にそれを支える銭や米じゃな」
そうしたものが全て重なった強さ、それが織田家の強さだというのだ。幸村にはこのことがよくわかった。
それで今も都を見て言うのだ。
「戦になれば死にもの狂いで戦うしかないわ」
「そして勝ちますか」
「何としても」
「そうするしかないのう。むっ」
ここで幸村は前に一人の男を見た、それは。
派手な出で立ちの大柄な男だった、青だがその青が様々なものが混ざった服にやけに大きな朱槍を右手に持っている。
漆黒の巨大な馬にも乗っている、それはというと。
「殿、あれはまさか」
「あの身なりといい黒馬といい」
「それにあの朱槍」
「あの者こそが」
「うむ、前田慶次じゃな」
幸村はすぐに彼だと察した。
「間
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