第百二十一話 四人の想いその二
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猿飛が笑ってこんなことを言ってきた。
「今はじっくりとここにいたいのですが」
「風呂の中にか」
「はい、どうもそれがし昨日酒をしこたま飲んだせいで」
それでだといいうのだ。
「随分酒が残っていまして」
「それでか」
「風呂で酒を抜きたいのでござる」
こう幸村に言うのだ。
「そうして宜しいでしょうか」
「うむ、よいぞ」
幸村は猿飛のその言葉に笑って返した。
「風呂はゆっくりと入ってこそだからな」
「有り難うございます」
「わしも酒が残っておる」
幸村も笑って言う。
「だからな」
「まずは酒を全て抜いてですな」
「そのうえで」
「一日をはじめようぞ。しかし朝風呂というのは」
「はい、中々いいですな」
「気持ちのいいものです」
十勇士達は幸村と共に風呂に入りそのうえで昨日の酒を抜いた、それから朝飯をたらふく食ってから寺を出た。そしてだった。
都を見て回る、その都はどうかというと。
この日も家や店が次々と建てられ人が行き交う、人は昨日よりも多かった。
その都の中を見て幸村は今日も唸った。
「昨日よりもさらに凄くなっておるな」
「まさに一日経つだけで、ですな」
「違ってきていますな」
「うむ、これは凄い」
幸村は唸って言う。
「都は平安の頃よりさらによくなるやもな」
「ですな、左京も右京もですな」
「よくなりますな」
「うむ、特に上京じゃな」
都といっても幾つかに分かれている。その中では右京、左京だけではなく上京もある。そこには多くの公卿達が戻ってきているのだ。
幸村達はその上京に今いるのだ、そして言うのだった。
「ここは凄いのう」
「ですな、公卿の方々も戻ってきておられますし」
「よい屋敷もどんどん建っています」
言うその傍から建つ状況だった。
「これからは都はかつて以上に栄え」
「よき場所になりますか」
「もう戦国の爪跡は消えようとしているな」
幸村はこうも言った。
「これはな」
「ですな、都から消え」
「そして他の国からも」
「戦国の世ではなくなろうとしていますな」
「間違いなく」
「織田信長がはじめるというのか」
ふとこんなことも言う幸村だった。
「戦国の終わりを」
「それはどうかと思いますが」
「我等にとっては」
「戦国の世を終わらせるのは御館様以外にない」
幸村にとってはそうだった、信玄以外の誰もこの国に泰平の世をもたらす者はいない、だが今その目で見ているものは。
「しかしこの都を見れば」
「織田信長、どうもこれは」
「かなりの者ですな」
「かなり以上の者じゃな」
稀代の傑物、幸村はこの言葉は出さなかった。
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