第百二十一話 四人の想いその一
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第百二十一話 四人の想い
幸村は朝に起きると寺の僧達にあるものを勧められた。それは何かというと。
「風呂か」
「はい、それに入られますか」
「如何でしょうか」
「ううむ、となると外に出てか」
武田の領内には温泉が追い、それでこう言ったが言ってすぐに自分で気付いてこう言いなおしたのであった。
「いや、都に温泉はないのう」
「はい、寺の中の風呂です」
「この寺では風呂はいつも朝に入りまして」
それでだというのだ。
「入れたのですが」
「最初にどうでしょうか」
「その風呂は大きいか」
幸村は僧達にこのことも問うた。
「どれだけの大きさか」
「十五人は優に入られますが」
「それだけの大きさですが」
「ふむ、わかった」
ここまで聞いて頷く幸村だった、そうして。
共に寝ていて今は起きている十勇士達に顔を向けてそのうえで言った。
「では共に入ろうぞ」
「はっ、有り難きお言葉」
「それでは」
十勇士達は主の相伴の誘いに笑顔で応じた、そうしてだった。
彼等は共に風呂に向かった、風呂といっても蒸し風呂ではなく湯の風呂だった。彼等は裸で湯舟に入りそのうえでこんなことを言った。
「いや、酒をしこたま飲んだ次の日はこれですな」
「やはり湯ですな」
「湯に入ると酔いが醒めます」
「実にいいですな」
「うむ、酔いは残すと厄介じゃ」
幸村も湯舟の中で共にいる彼等に笑顔で話す。
「だからこそじゃ」
「こうして入るとですな」
「後で楽になりますな」
「昨日は飲んだからのう」
酒のことも思い出して言う幸村だった。
「正直頭が痛かったわ」
「その痛みが急に消えておりまする」
「願っててもない申し出でした」
「こうして汗をかくと違いますな」
「いい気分です」
「わしもじゃ。では風呂で酒を抜き」
それからだった。
「朝飯を食ってな」
「そのうえでこの都を少し見回り」
「そしてですな」
「織田家の都の政を見たい」
これが幸村の考えである、ただ都に上がるだけでなくその中をじっくりと見たいというのである。
それでこうも言うのだった。
「今もかなり見ておるがな」
「随分見事な政ですな」
「今まで見ただけでも」
「うむ、これだけの政をするとは」
幸村は言う。
「そうは出来ぬ、しかしじゃ」
「さらに細かいところまで見ますか」
「小さなところも」
「一度見ただけでは見落としやわからなかったこともあるからのう」
それでだというのだ。
「もう少し見ようぞ」
「はい、わかりました」
「それでは」
十勇士達も湯舟の中で主の言葉に頷く、そうしてだった。
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