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シモン=ボッカネグラ
第一幕その二
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リエレ一人になった。
「朝日が昇ったか」
 彼は海から昇って来る太陽を見て言った。
「とりあえずお腹が空いたな。何か食べるとするか」
 その場を去ろうとする。そこで一人の老人と出会った。この家の使用人の一人でアメーリアの養育係を務めている。心優しく堅実な老人でアメーリアも彼を深く信頼している。
 白い髪と髭の長身の老人である。服は黒っぽいゆったりとした長いものを着ている。
「あ、これはどうも」
 老人はガブリエレを認めると一礼した。二人は顔見知りである。
「いえいえ、こちらこそ」
 ガブリエレも挨拶を返す。身分は彼の方が上だがこの老人には敬意を払っているのだ。
「何かお悩みのようですね」
 老人は彼の顔を見て言った。
「ええ、まあ」
 彼はそれに対して口ごもった。まさかクーデターの件をこの老人にも悟られたのかと思った。
「お嬢様の事で、ですね」
 ガブリエレはその言葉を聞いてホッとした。
「はい、そうなんです」
 彼はそれに対し言った。これもまた事実であった。
「実は彼女と結婚したいのですが」
「我が家の主人には了承は?」
「既に得ています。快諾してくれました」
「ならば何の問題もないですが」
「それが、総督が・・・・・・」
「総督が!?」
 それを聞いた老人の目が一瞬憎悪で燃え上がった。だがそれはほんの一瞬だったのでガブリエレは気が付かなかった。
「実は彼女をパオロの後妻にしようと考えておられるようなのです」
「ほほう、それはまた」
「どうしたらいいでしょうか?何か良い考えはありませんか?」
「ありますが」
「本当ですか!?それは・・・・・・」
「それは後でお話します」
 彼はそこで話を一旦切った。
「ところで」
 話題を変えてきた。
「はい」
 ガブリエレもそれに乗った。
「これから私がお話する事を驚かずに聞いて頂けますか?」
「?はい」
 何のことかわからなかったが了承した。
「わかりました。それではお話しましょう」
 彼はゆっくりと口を開いた。
「お嬢様の事ですが」
「はい」
「実は私とご主人様しか知らない秘密があるのです」
「秘密!?」
 ガブリエレはその言葉を聞いて目の光を強めた。
「・・・・・・ひとつ言っておきます。これを聞いても貴方はまだお嬢様を愛せますか?」
 老人は険しい顔をして問うた。
「はい。例え彼女が人の腹から生まれた者ではないにしても」
 彼は強い声で言った。
「そうですか。ならばお話しましょう。お嬢様は貴族の出ではありません」
「なっ!?」
 これにはガブリエレも驚いた。
「ではアメーリアは・・・・・・」
「そうです。お嬢様は本当はこの家の者ではないのです」
 老人は彼を見据えて言った。その目はまるで彼の心を見ているよう
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