第九十二話 アルブレヒト戴冠
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雰囲気が変わるのを感じ取った。
折りしも守衛の男が皇帝アルブレヒト3世が入来を宣言した
「ゲルマニア皇帝アルブレヒト3世閣下の、おなぁ〜りぃ〜!」
ワッ!
主役の登場に一斉に歓声があがり、大量の拍手に送られてアルブレヒトが現れ、アルブレヒトの後にマクシミリアンとカトレアが現れた。
「ようやく来たわね」
キュルケはマクシミリアンを誘惑する為にダンスを踊ろうと彼に近づくが、アルブレヒトの周りに出来た取り巻きに阻まれてしまった。
「ちょ!? ちょっと退きなさいよ!」
独身のアルブレヒトの周りには玉の輿を狙うゲルマニア婦人が取り囲み、キュルケは貴婦人を押しのけようとしたが、婦人達の強烈なパワーに押されて近づくことすら出来ない。
見た目は麗しいゲルマニア貴婦人は、見た目に反して非情にパワフルで、13歳の小娘のキュルケには相手が悪かった。
そうこうしている内に、マクシミリアンはカトレアの手を取ってダンスの輪の中に入って行った。
「もう! 行っちゃったじゃない!」
キュルケはゲルマニア貴婦人らに地団太を踏むものの、結局マクシミリアンと接触できず、晩餐会は終了してしまった。
★
晩餐会は終わり、マクシミリアンら一行はショーンブルン宮殿への帰途に着いた。
時刻は既に深夜を回っており、『大勢で移動するのも住民に悪い』とマクシミリアンが少数の護衛のみと断っての道中。石畳の道路は双月は両方とも厚い雲に隠れて月光は地上に届かず、馬車に掛けられた魔法のランプが唯一の明かりだった。
ゲルマニアでの全日程を終え、肩の荷が下りた気分のマクシミリアンは、いつも怠らない警戒をこの時ばかりは緩め、寝入ったカトレアに膝枕をしてピンクブロンドの髪を弄っていた。
「ふぁ……眠いな」
マクシミリアンは欠伸を掻くと首をコキコキと鳴らした。
「陛下。ショーンブルン宮殿までまだ掛かりますから、横になられても構いません」
「そうか……悪いなセバスチャン。お言葉に甘えさせてもらおう」
馬車の手綱を握るセバスチャンの言葉に従い、マクシミリアンはカトレアの膝枕をしたまま舟をこぎ出した。
「ぐー」
「くー」
数分と立たずにマクシミリアンは寝息を立て始め、馬車内はマクシミリアンとカトレアの寝息の二重奏が奏でられた。
御者席に座るセバスチャンは後ろを振り向き馬車内の二人の様子を見て再び向き直ると、ヴィンドボナの夜の闇を見た。
「……妙な」
『メイジ殺し』としてのセバスチャンの直感が、夜の闇の中に溶けた獣の臭いを感じた。
セバスチャンは魔法のランプに手を伸ばし、明かりの強度を強くすると馬車の進行方向に巨大な足を映した。
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