第一夜
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月明かりが照らす冬木港の船着き場。
巨大なガントリークレーンとコンテナが見下ろすなか、三つの影が月明かりに浮かび上がっていた。
アイリスフィールを背後に庇う様にして立つセイバーは目の前に対峙する敵サーヴァントの様子を注意深く観察していた。
セイバーよりも遥かに勝る体躯を持つ敵サーヴァントは、全身を帯状の布で覆われ、唯一頭の隙間から双眸を晒すのみである。
手に持つ獲物は自身の身の丈よりもはるかに大きい長槍。
こちらも同じく柄の部分全体を体と同じように布で覆われている。
敵はこちらに正体を余程知られたくないのか?
聖杯戦争において英霊の正体は真名を知られることと同義。
それ故に自身の謂れと近しい武器を隠すのは理にかなっている。
それだけ敵に自分の正体を知られにくくなるからだ。
つまり敵サーヴァントは武器のみならず己が身も隠す必要がある程の名のある英霊。
一目とその姿を見れば真名を知られてしまうほど...。
ギュっとセイバーに手に力がこもる。
それ程の強者と時空を超えて戦えるのはサーヴァントとしての本分を超え、騎士として正々堂々と名乗りを上げて手合せ願いたい。
だが、それを許せぬわが身のなんと不自由なことか。
セイバーは名乗りを上げるかわりに不可視の剣を構えた。
敵恐らくは槍のサーヴァントランサーも同じく自身の獲物を構え両者の間に僅かな間。
先に動いたのはランサー。
一瞬前屈みの体勢を取ったのち地面を脚力に任せ思いっきり蹴ると同時にセイバーに突撃した。
全サーヴァント中最高の俊敏性を誇るランサーのサーヴァントの挙動は常人には到底目視することは叶わない。
唯の人のみであれば気づく間もなくランサーの手に持つ槍に貫かれていたことだろう。
だが、ここにいるのはランサーと同じく遥か昔偉業をなした英霊。
しかも全サーヴァント中最良のサーヴァントとされるセイバーはランサーの突きを真っ向から受け切った。
二つのサーヴァントの激突の瞬間空気が裂けアスファルトの地面に亀裂が走った。
そこからの戦いは最早超人の域。
人間の目では追うことさえ叶わない。
セイバーの剣劇とランサーの槍がぶつかり合うこと数十合。
どちらも宝具を使うそぶりを見せていない。
聖杯戦争の序盤、どちらも十分以上に余力を残していた。
だがこのままでは一向に決着がつかずただ徒に消耗するのみ。
この状況を打開するには...
「なにをやっているランサー。」
夜のコンテナ街にランサーのマスターの声が木霊する。
「セイバーは難敵だ、速やかに始末しろ。宝具の開帳を許す」
ランサーはマスターの命令に従い自身の槍を覆っていた布を解く。
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