第一幕その一
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うとしている。
「花には露が落ちている。そしてその露を今度は太陽が照らしてくれるのね」
海の方を見る。暗い闇の中にその波音だけを聞かせる海はその姿を太陽に照らし出されようとしている。
「空が白んできてそして朝がやって来る。それと共に私の愛しいあの人も目覚めるのね」
その時遠くから声がした。
「アメーリア!」
女の名を呼んでいる。高く澄んだ男の声だ。
「あの人ね」
アメーリアはその声を聞いて微笑んだ。
「何処にいるんだい?」
どうやら彼女を探しているらしい。彼女はそれを聞いて微笑んで言った。
「こっちよ。庭園にいるわ」
それを聞いた男の気配がこちらにやって来る。そして彼が姿を現わした。
黒い髪に黒い瞳の若々しい青年である。歳はアメーリアより少し下のようだ。まだ少年の面影が残るその顔立ちはそこに気品や熱さも漂わせていた。
赤と黄色の上着に黒いズボンを身に着けている。細身の引き締まった身体である。背は普通位か。
彼の名をガブリエレ=アドルノという。ジェノヴァの有力貴族の一人である。
「またここにいたのかい?」
ガブリエレは彼女の姿を認めて言った。
「ええ。ここの景色がとても綺麗なので」
彼女は微笑んで答えた。
「うん、確かにここの景色は素晴らしいね。何度見ても飽きないよ」
彼はそれに同意して言った。
「気に入ってもらえて嬉しいわ。出来る事なら貴方とずっと見ていたいわ。ずっとね」
彼女は彼の目を見て言った。
「ずっと、って。何か思わせぶりだね」
ガブリエレはそんな彼女に対して言葉を返した。
「それは・・・・・・」
アメーリアはそれに対し言葉を濁らせた。
「どうしたんだい?」
彼は尋ねた。
「私に何か隠してない?」
アメーリアは彼に逆に問うてきた。
「えっ、それは・・・・・・」
彼はそれを聞いて狼狽した。それが答えだった。
「総督に対してクーデターを考えている・・・・・・。昨日貴方が話しているのを聞いてしまったの」
「そうか、聞いていたのか」
ガブリエレはそれを聞いて表情を暗くした。
「貴方のお父上の事は知っているわ。その気持ちはよくわかるわ。けれど・・・・・・」
アメーリアも話しているうちに表情を暗くさせていく。
「私は貴方が断頭台で無残に死ぬのを見たくはないの。お願い、そんな事は止めて」
「けれど・・・・・・」
ガブリエレは言葉を詰まらせた。
「出来ない、僕は父の仇を討たなくてはいけないんだ」
彼は頭を振って言った。
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