プロローグその四
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待ってくれ、娘は必ず見つけ出す」
シモンはそんな彼を呼び止める様に言った。
「どうやってだ?」
フィエスコは後ろを振り返らず言った。
「それは・・・・・・」
シモンは言葉が無かった。方法が思いつかなかった。
「無いのだろう、それでは話にもならん」
フィエスコはそう言うと去って行こうとする。
「おい、待ってくれ!」
シモンは呼び止めようとする。だが彼はそれには耳を貸さず姿を消した。後にはシモンだけが残った。
「・・・・・・何という奴だ」
シモンはそんな彼の後ろ姿を見て言った。
「あんな美しく清らかな娘がどうしてあんな男から生まれたのだ。信じられん」
ふと屋敷を見る。扉が開いていた。
「中にいるんだったな。入れてもらうか」
扉の前に行く。そして中を窺う。
「誰もいないな。失礼だが入ってみるか」
彼はそう言うと屋敷に入って行った。そこへフィエスコが戻って来た。
「ほう、奴は屋敷の中へ入ったか」
シモンの姿が無く屋敷に光が照っているのを見て言った。
「精々探し回れ。そして冷たくなった娘を見るんだな」
彼はシモンを呪うように言った。その声には憎悪の他に悲しみも混じっていた。
シモンは屋敷の中を家の中で見つけた聖母像の燭台を手に探し回っていた。
「マリア、一体何処にいるんだ」
屋敷の中は誰もいない。そして彼は地下室へ入って行った。
「さて、そろそろかの」
フィエスコは暗い笑みを浮かべて言った。
「貴様もわしと同じ苦しみを味わうがいい」
そう言った時だった。シモンが屋敷から出て来た。
「そんな・・・・・・・・・」
彼は完全に絶望していた。屋敷の門をくぐり外に出るとガックリと膝を着いた。
「何故だ、何故彼女は死んだのだ・・・・・・」
フィエスコはそれを見て相変わらず暗い顔で笑っている。そこへ遠くからシモンを呼ぶ声が聞こえてきた。
「ボッカネグラ!」
大勢の群集の声だ。シモンはすぐにそれに気付いた。
「何だ?」
見れば職人や水兵達である。松明を手に持っている。他にも多くの者がいる。老若男女様々だ。
「あれは・・・・・・」
その先頭にはパオロとピエトロがいる。どうやら彼等が明け方に来てくれるよう集めた者達らしい。
「旦那、そんなところにいたのか」
パオロが彼に声をかけた。
「これを見てくれ、皆貴方に総督になって欲しいんだ」
ピエトロも言った。
「皆の願いだ、総督になって街と俺達を導いてくれ」
皆その声に頷いた。松明の火がゆらゆらと揺れた。
「総督か・・・・・・」
シモンはそれを半ば放心した状態で聞いていた。
「俺にはそんなもの・・・・・・」
「皆貴方を必要としているんだ」
「そうだ、それを断るのはどうかと思うぞ」
二人はそんなシ
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