プロローグその三
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の実力者となっていた。
だがそれが平民達の怒りを買った。彼等との戦いにより彼もまた力を失い今は失脚している。
「愚かな者達だ、そうして内部で争って何になるというのだ」
彼は下に下りて言った。そしてふう、と溜息をついた。
「だがもうそんな事はどうでもいい。最早この屋敷とも永遠の別れだしな」
そう言って屋敷を見た。暗闇の中に浮かび上がるその屋敷は何も言わない。
「マリア・・・・・・」
ふと女の名を呼んだ。
「聖母様と同じ名を与えたというのに。何故幸薄くわしより先に死んだのだ」
頬を涙が伝う。
「わしは御前をどうする事も出来なかった。沈む御前をどうする事も出来なかった」
そう言って顔を俯けた。
「あの男との結婚を許すべきだったのか、いや、それだけはならん」
彼はそう言って頭を振った。
「だがあの娘を殺したのはわしだ。・・・・・・わしは何と愚かな父なのだ」
屋敷から多くの人々が出て来た。どうやらフィエスコ家に仕える者達のようだ。
「旦那様、お元気で」
彼等を代表して一人の年老いた男が言った。
「うむ、そなた達も元気でな。今までご苦労だった」
「はい・・・・・・」
彼等は礼をしてその場を去って行く。フィエスコはそんな彼等を無言で見送っている。
「娘もいない、家もない。最早わしは只のさすらい人か」
彼はその場を去ろうとする。だがその時誰かが屋敷の前に来た。
「あの男は・・・・・・」
それを見たフィエスコの顔が怒りに満ちていく。シモンが来たのだ。
「至るところで俺の名を呼んでいる。どうやら俺が総督になりそうだな」
彼はそう呟きながら教会のところにやって来たのだ。
「明け方に皆ここに来るというが。そうすればようやく俺は彼女を迎えられるのだな」
そう言って屋敷の方を見た。
「もう少し待っていてくれよ。そうすれば俺達は一緒になれる」
「そう上手くいくかな」
フィエスコが彼の前に出て来た。
「あんたか」
シモンは彼を見て言った。無意識に眉を顰める。
「よくもまあそんな事が言えるな。あの娘が御前の妻になるだと?」
フィエスコも不快さを露にして言った。
「丁度貴様に天罰が下るように願っていたところだったというのに。今そうして貴様の顔を見るとはな」
「あんたはそうやっていつも悪口ばかり言うな。いつも俺が頼んでいるのに」
「頼み?何だそれは」
フィエスコはとぼける様に言った。
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