裏通りの鍛冶師
とあるβテスター、洞窟を行く
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った。
妙に熟練度が高いことを不思議に思って尋ねると、彼は『映画とかでよくあるだろ、ヒャッハー!お宝だぜぇ!ってはしゃいでる奴が真っ先にトラップで死ぬシーンがよ……!俺はあんな風にはならねえからな……!』と震え声で語った。
どうやらソロでやることを前提としてスキル構成を考えていたわけではなく、単にトラップに脅えながら生活しているうちに自然と身に付いてしまった技術らしい。
『伊達に一人で場数を踏んできたわけじゃないんだなぁ』と思ってしまった僕の感心を返してほしい。
そして、最後。理由その三。
僕がこの洞窟に近寄らない、至ってシンプルな理由。
「ゲ……ガアアアアア……!」
単純に、敵のビジュアルがグロい。
『荒くれ者の墓所』というダンジョン名から想像がつくように、ここに登場するモンスターは全てアンデッド。つまりゾンビだ。
NPCの話によれば、ここはラムダの裏通りで殺された者の死体を放棄するために使われていた場所で、積もりに積もった怨念が死者をアンデッドとして蘇らせている……ということらしい。
墓所というのは名ばかりで、要は死体処理場だ。
「アア…ウグァ……」
「ゲギ……ガァァァッ!」
腐りかけの身体にぼろぼろの布きれや壊れかけの鎧を纏い、這いつくばるように迫ってくるゾンビたち。
生前に使用していたのか、五体満足なゾンビには長剣や手斧で武装しているものもいる。
ナーヴギアの映像技術をフルに駆使した腐乱死体の描写は、当分肉やネギトロを食べる気が失せてしまうくらいにリアルだった。
正直もう帰りたい。僕、ホラーは苦手なんだってば。
「……とか言ってられないよね。シェイリの武器のためだもん、我慢我慢……」
「なーにー?」
「ん、なんでもない。それより、右から来るよ!」
「はいはーい!」
これから先、迷宮区にゾンビがわんさか湧いて出てくるような層もあるかもしれない。
今のうちから恐怖心を克服しておかなければ、いざという時に命取りになってしまう。ここは耐え忍ぶ時だ。
……と、自分で自分を誤魔化しつつ、シェイリに指示を飛ばして戦闘を続行。
同時にナイフを四本投擲し、彼女に向けて突進技を発動させようとしていたゾンビの長剣を弾く。
ここに出現するゾンビたちは如何せん数が多く、油断するとすぐに囲まれてしまう。
そのため、リリアとシェイリとで複数湧いたゾンビを一体ずつ相手取り、僕は投剣で他を足止めしつつ後方支援というスタイルを取っていた。
幸いなことに、ゾンビたちは身体が腐り始めているため、投剣スキルを一発でも当てれば部位欠損を狙うことができる。足止めをするには十分だ。
その分、吹き飛んでいく腕や足などのパーツ(腐りかけ)を見る度に、僕の精神がガリガリと削られていく気もするけれど。
「くらいやがれ、く
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