裏通りの鍛冶師
とあるβテスター、洞窟を行く
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上質なインゴッドを持つというモンスターを捜しに、僕たち三人はその洞窟へと足を踏み入れた。
『荒くれ者の墓所』。2023年3月4日現在、最前線にあたる第17層の隅に、ひっそりと存在しているダンジョンだ。
本来であれば、最前線のダンジョンともなれば、狩場に赴くプレイヤーの数も自然と多くなる。
だけど、頭に“ひっそりと”と付くことからわかるように、この洞窟で狩りをするプレイヤーはほとんどいない。
理由その一。経験値・金銭効率が著しく悪い。
普通、RPGでは敵の強さと経験値効率は比例している。
敵が強くなればなるほど取得経験値も多くなり、ドロップするアイテムも高値で売れるものがほとんどだ。
必然的に、MMORPGでは強い敵が出るダンジョンは効率のいい狩場として人気が出る傾向がある。
ところが、この『荒くれ者の墓所』に出てくるモンスターは、強さと経験値が割に合っていない。
迷宮区に出現するモンスターが『強さ10』に対して『経験値6』とするなら、ここのモンスターは『強さ9』に対して『経験値2』といったところだ。
下手なモンスターよりも強いくせに、獲得経験値はそれより低いという、なんとも納得いかない設定になっている。
おまけに、ここの敵はこれといったレアアイテムをドロップすることもない。
たまに武器をドロップすることはあるけれど、そのほとんどが第1層のNPC商店で購入可能なレベルの武器……要するに、ほとんど価値のないものだったりする。
プレイヤーたちの間では、ドロップアイテムテーブルの設定ミスなのではないかと噂されているほどだ。
あの茅場晶彦がそんなミスをするかなぁとも思ったけれど、それ以外に説明の付けようがないのではないかというくらいに、このダンジョンの設定は理不尽の一言に尽きる。
理由そのニ。トラップの数がやたらと多い。
荒くれ者と名が付くだけあって、この洞窟には他のダンジョンよりもトラップの数が多い。
壁に空いた穴から毒矢が飛び出してくる、設置された松明の火が突然消えるなどといった、大小様々な罠が用意されている。
毒はアイテムで治療できるし、松明は消えても一定時間で元に戻るため、一見すると大した罠ではないように思える。
だけど、それは余裕がある時だからこそ言えることだ。
仮にモンスターとの戦闘でHPが減っていた時に毒を受ければ、回復が間に合わずにそのまま死に至ることだってある。
松明が消えるトラップにしても、戦闘中に突然視界が真っ暗になれば……その後どうなるか、想像するのは難しくないだろう。
ほんの少しのイレギュラーが死に直結するSAOにおいて、こういったトラップの存在は決して無視できるものではない。
今回はリリアが《罠解除》スキルを鍛えていたため、僕たちがトラップのお世話になることはなか
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