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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第三十五話 Konzertmeister
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とで事情が違っている。
つまり、何が言いたいかといえば、

「……ッ!?これは……」

聖槍が鳴いて震えだす。その気配に蓮は覚えがあった。蠢く影、先の見えぬ闇。不吉な直感が背を走り抜ける。まさか、と―――

「Konzertmeister―――というものを知っているかね?例えるならば私はいわゆる楽団の指揮者だ。そして、それは指揮者の代役であり、調節役であり、俗にいう楽員の指導者だ」

それが他者の創造を使うものであると理解した蓮は身構える。感覚でも理解できる。あれはアルフレートの渇望だと。であれば実際に受けたことはないが、その能力は知っている。己が身の弱体化の危機に曝されると直感が告げる。だが、その予測はラインハルト本人に否定される。

「勘違いしているようだな。彼の渇望はもとより他者への献身だ。故に他者の弱体化などというのはその氷山の一角にすぎん。真に彼の渇望たるものは―――自軍の強化に他ならんよ」

蓮の行動に僅かな呆れを含ませ、ラインハルトはそう断言する。でなければ楽団などにたとえはしないと。そうでなくては弱体化などという英雄あるまじき行為をするものに騎士の立場を与えはしないと、そういうかのごとく。

「その闇は無意味な語りを魅せる者。神に祈り、神を信ずる
故に謗られ、罪深き業を背負う。人であることを望み、また人となれぬことに嘆く
悪から救え、善すらも殺せ―――照らされる影
我を救え―――
晦冥世界 主の祈り (Svart?lfaheimr Paternoster)」

「なッ―――!?」

瞬間、ラインハルトの魂の総量が明らかに増加した。直接的に魂の数が増えたわけではない。一つ一つの魂の格そのものが増したのだ。
これは黄金の輝きそのものが増したわけではない。いや、そもそもラインハルトの黄金の輝きは元からこれ以上増すようなものでもない。にも拘らずよりその輝きが今まで以上に照り映える。

「言ったであろう、彼はKonzertmeisterだと」

元々、彼は魂の生成を含め、そういった分野の魔を執り成すものだ。故に、彼の創造の本質は弱化などではなく強化。つまり、輝きそのものを増すのではなく、輝きを映えるように映すのだ。陰影をつけ、より一層の光沢を魅せ、映す位置すら計算する。それは最早一種の芸術。最高の黄金の素材を、技術の粋を凝らし集め潤沢に使った、至高の芸術。今のラインハルトはまさにそれであった。
まずい、と蓮は直感的にそう感じる。先ほどまでの蓮とラインハルトは対等、あるいは若干ながらも蓮が勝っていたと言える。だが、今は違う。天秤の針は明らかにラインハルトに傾いており、このまま流れを持っていかれることになれば蓮が不利になるのは明白といえた。

「何を焦っている。まだ余興は始まったばかりだぞ」

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