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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第三十五話 Konzertmeister
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に傾くこととなる。無論、彼にとって最悪の方向へ。

「絶対に、俺が斃すッ!―――行くぞォッッ!!」

今ならば彼の刃はラインハルトの首を断てる。過去最高潮の力が宿った右腕に自然、力がこもる。

「なるほど、速いな」

同じ流出位階に立っている以上、互いの異なる世界の異なる常識がぶつかり、そして鬩ぎ合う。時が完全に止まることこそないが、速さというアドバンテージにおいては藤井蓮に勝るものはいない。それでもな、一撃が与えれない。共に必殺の威力を放てるであろう武器を持ちながら、互いにその一撃を許さない。

「卿はこの新世界に何を願う」

無論、お前たちのいない世界を。

「己の覇道で何を生む」

答えるまでもない、それは穏やかに安らげる日々。

戦争(わたし)を人から取り除くことなど誰にも出来んぞ」

首を断ち切る軌道を描く斬撃をラインハルトはたやすく払う。払われた腕をそのまま反転させ、蓮は斬りかかる。しかし、それは彼の視界から完全にそれていたにもかかわらず腕を振るい、呆気なく受け止めた。
世界と世界がぶつかり、刃と刃が弾きあう。

「異なる他者への排撃は、魂の根幹に刻まれた人の原罪(つみ)だ。決して拭えん。卿もまた、私を認められんのだろう?」

確かにそれは事実だ。彼にとっての非日常が始まる前の日常での日々とて世界のどこかで戦争は起こっていただろう。殺し合いのように大仰なものでなくとも、相容れない他人を前に喧嘩をしたり嫌い合ったり、拒絶するが当たり前に満ち溢れている。だが、彼が言いたいのはそうじゃない。そんなことではない。

「ならば私の内で渦巻くことと、何の違いがあるという。殺し合わずにおれないならば、等しく我が城で永劫の闘争を続ければいい。卿とて同じだ。力を得て興奮したろう」

確かに、力を求めた瞬間を否定はしない。

「他者より抜きんでることに優越を覚えたことは?」

勝利するために刃を磨いた。それもまた真実だ。

「誰もが思ったはずだ、こうでなくてはならない。胸躍り、燃え上がる血の熱さ。非現実の戦争こそが狂おしく求められる人の娯楽だ。矮小な善とやら、取るに足らぬ道徳とやら、社会の規範たる常識とやらが卿らの牢獄(ゲットー)にほかならん。そこから解き放たれる瞬間こそを皆が心から祈っている。
故に与えてやるのだ。この私が。鉄火に満ちた戦場の風を、慰めの妄想に過ぎなかった非現実を、私が愛しい者らへ贈ってやろう」

それだけは絶対に否定する!

剣戟に鋭さが増す。一撃、二撃と連続して放たれる猛攻。だが届かない。速さで上回っていようとも彼には己の才と収束させた軍団(レギオン)の経験がある。一撃を受ければ次の一撃がどこから来るのか。彼にとってそれを予測することは―――否、闘争そのも
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