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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第三十五話 Konzertmeister
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「今、我らこそがこの世界の中心にある。謳おう、共に素晴らしき歌劇を!」
運命の槍と断頭の刃がぶつかり合う。火花を散らせ初撃決殺となっていても不思議ではなかっただろう。いや、むしろそうなる可能性の方が高かった。しかし、結果は違った。拮抗している。ラインハルトと藤井蓮は互いの刃に火花を散らせ、欠けることなどなくぶつかり合っていた。
「いい目だ、見違えたぞ」
そう嘯くラインハルトの目、黄金に燃える奈落のような
輝き
(
あんこく
)
を隠すことはない。
「そんなに他人の魂が旨いのか」
そんなに楽しいのか、戦争が。嬉しいのか、殺し合いが。一人一人の生を夢を、好きな異性も家族も仲間もありとあらゆる人間を喰らうことがそうまで至福かと、そう激怒する。
「それを奪うことがお前の世界か!?」
「無論だ、我をもって全と成す。私が世界となるのだから、細胞の一つひとつを慈しむのは道理だろう。ああ、甘いぞ。美味だ、まだ喰い足りん。愛も勇気も絶望も、怒りも悲しみも何もかも――――――鬼畜と呼ばれる罪人も、生まれたばかりの乳飲み子も、我が身を這い回る小さき者共は例外なく祝福しよう。
その物語こそ、至福の供物だ。私の
宇宙
(
ヴェルトール
)
に在る者は、それを代価に支払ってもらう。皆、よい夢を見せたであろう?私を恐れる者も、敬うものも、何かを取り戻そうとする者も――――――」
幸せだろうと。彼は何一つ躊躇いなく、そう断言する。
「お前は悪魔だ」
偽りの夢と力を与え、代価として魂を奪い取る
愛すべからざる光
(
メフィストフェレス
)
。奴隷とした死者の城で君臨する墓の王。断じて、存在を許していいものじゃない。
「フム、悪魔か、確かにカールもそう言っていたが、我が臣曰く、悪魔とは獅子を指さぬらしい」
「いきなり、何を!?」
否定されるとは思っていなかったのか、思わぬ反論に蓮はたたらを踏む。
「そも、悪魔とは抽象の存在であり、人の身である私はどれほど愚かな振舞いをしようとも悪魔とは言わぬ。悪魔とは元々、この世の業を持たざる者のみらしい。つまり、この世ならざるものだ。もっともこれは彼の持論らしいがな」
「だからって―――」
それがどうした。それでもお前は悪魔に等しい存在だ。いや悪魔そのものよりもたちが悪い。だからこそ、俺はお前の存在を許すわけにはいかない。
そう思い、さらに一歩踏み込み、斬りかかる。そして、その蓮の断頭は再びはじき返される。天空の方陣を蹴り上げ、宙を舞う。踏みしめた感覚はまさに大地そのもの。質量を持たないこの方陣が示す意味はつまり今尚、成長し続けているということ。時間がない。
彼が玲愛を救うのは勿論のこと、町の外にこの祭壇が広がればその時点で総てが終わることとなるだろう。今は揺れ続ける天秤は確実
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