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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第三十四話 真の歌劇
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「妬けるか、カールよ」

ラインハルトは盟友にたいしてそう語り掛ける。返答は忍び笑いだった。そして二人は同時に詩を吟じる。

「Oh! Welchen Wunders h?chstes Gl?ck! (おお 至福もたらす奇跡の御業よ)」

「Der deine Wunde durfte Schlie?en, (汝の傷を塞いだ槍から 聖なる血が流れ出す) 」

そう、偶然などという生易しいものではない。それらは全くの同時に起こったこと。故に、今この時にこそ、

「この既知感(ゲットー)は破壊され」

「次なる新世界へと超越するのだ」

総てはそうなるように仕組まれた“必然/偶然”。神の見えざる手はこの世には存在しない。ここに強く言っておくべきだ。人の意志。そは不可侵。

私は何もしていない(・・・・・・・・・)

例え、その過程にそれを知りながら壇上の上で小細工を行う輩がいようとも、それは彼の関与するところではない。何故なら彼は何もしないことを選択したのだ。故にカール・クラフトはそう呟いて微笑した。

そして、決着はついた。

「―――見事」

「ああ、素晴らしい」

笑う水銀の超越と、遥か天の方陣から、黄金の破壊も愉悦の相を隠さない。

「では、いよいよ始めようか」

全くの想定外ともいえることは多く起きた。赤騎士(ルベド)の魂こそ身の内に戻った。白騎士(アルベド)の代替色である水騎士(アグレド)とてそれは同じ。白皙の魔人もその魂を捧げた。しかし、黒騎士(ニグレド)と影の魔女、雷の戦乙女(ヴァルキュリア)はこちらへと来ることがなかった。
だが、それに怒りを見せる様子も、それどころか愉悦の表情すらラインハルトは浮かべる。全くもって面白いではないか。

「ならば私はこれで―――我が友と共にあなた方の戦いを見物させてもらうとしよう」

「そうだな待っているがいい。なに、すぐに会えることだろう」

新世界の海で。

「故に私の覇道で塗りつぶそう。どちらが新世界のミチを開くか」

胸が躍る。ああ、こうでなくてはならない。何をやってもつまらない。何をしていても満ち足りない。人の満足とやらを味わったことすらない。それを今ならば気にすることなどなく開放できる。ああ、なんと喜ばしいことだ。
であれば、よし。我が条理を全として、破壊の君たる本分を魅せよう。故に貴様も魅せるがいい。今このとき、鬩ぎ合う覇道と覇道の戦争こそが我が全力を示す時なのだ。

「では、いざ参らん。新たなる祝福の天地へ」

瞬間、幾千の死者が道を織りなす。(まなじり)を決してこちらへと向ける青年。年長のつとめを果たさねばな。

「来い」

最後の、そして最大にして最高の戦をしようではないか。
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