第三幕その三
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今墓場から抜け出してきたのだ」
彼は剣を抜いた。そしてシモンにそれを向けた。
「長きに渡る我が憎しみ、今こそ受けるがいい」
だがそれを聞いたシモンの顔は急に苦しみから解放されていった。
「そうか。ようやくあの時の因果が断ち切られるのか」
「?確かにそうだが」
フィエスコは彼の顔を見て不思議に感じた。
「だがそれは貴様の死によってだ。このわしの手でな」
「そうだ。貴様の手でだ」
シモンも言った。
「御前は一人の天使を導く為に墓場から甦ったのだから」
「天使!?先程から何を言っているのだ」
フィエスコは彼のその言葉に眉を顰めた。
「どのみち貴様は死ぬのだ。取り乱さずに死ぬがいい」
「私は取り乱してはいないぞ」
彼は毅然として言った。
「かって御前は許してくれたのだが・・・・・・」
「わしがか」
「そうだ」
シモンは力無く微笑んで言った。
「御前に譲ったあの娘だ。私があの時何処かへ消え去ったと言った娘が戻って来たのだ。アメーリア=グリマルディとしてな」
「まさか・・・・・・」
フィエスコはそれを聞いて顔を強張らせた。
「そうだ。御前がマリアとして育てていたあの娘だ」
「何だと!何故今になって真実が明らかになったのだ!」
フィエスコは絶叫した。そして剣を打ち棄てた。
「どうしたのだ?何故剣を棄てる」
シモンは彼に対して問うた。
「御前は剣をあれ程誇りとしていたではないか」
「・・・・・・わしの様な愚かな男は剣を持つに値しない」
彼はそう言うとシモンから顔を背けた。
「・・・・・・泣いているな。御前が泣くのを見るとはな」
「・・・・・・言うな、その訳は御前が天に代わってわしの心に語っている。わしは今まで取り返しのつかない事をしてきた」
フィエスコは言った。シモンを見る事は出来なかった。
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