第七章 銀の降臨祭
第四話 貫かれる剣
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何なんだッ!!」
デルフリンガーの声に士郎は全く反応しない。微かに身体が動いているため、まだ死んではいないだろうが、それも時間の問題だろう。倒れ伏す士郎の身体から、赤い血が大量に流れ出ている。
「相棒ッ!! くそッ! このままじゃ……ちくしょう……どうすりゃいいんだよ」
このままだと確実に士郎は死ぬ。
どうすればいいか分からず、苛立ち怒声を上げるデルフリンガーだったが、まずは落ち着けと自分にいい聞かせ、何とか落ち着きを取り戻そうとする。
「まずは……ここから離れねぇと」
アルビオン軍が撤退したとは言え、また戻ってくる可能性もなくはない。こんな見晴らしのいいところでは、直ぐに見つかってしまう。デルフリンガーは、まずはここから離れようと考えた。
「……『使い手』を動かすなんざどれぐらいぶりだ?」
ぶつぶつと呟きながら、デルフリンガーは自分の力を行使する。吸い込んだ魔法の分だけ使い手の身体を動かすことが出来る能力。先程の戦いで、吐くほど魔法を吸い込んだため、それなりの距離は動けるだろう。
倒れ伏していた士郎の身体が跳ねた。
意志を感じさせない様子で立ち上がった士郎が、近くの森目掛け走り出した。戦闘中の士郎の動きには劣るが、それは十分に早いものであった。
昇る日に追われるように、デルフリンガーが操る士郎の身体が、森の奥へと消えていく。
なあ、相棒。
―――森の奥―――
お前さん、本当に何者なんだよ?
ずっとお前さんのことを見ていたが、未だに良く分かんねぇ……。
―――生い茂る木々の隙間から微かに光が溢れる森の中―――
恐ろしい程冷静かと思えば、燃えるような激情を見せたり。
氷の如き冷酷さを見せたかと思えば、包み込むような優しさを見せたり。
―――一際巨大な木の根元に、士郎が寄りかかるように倒れている―――
残酷なほど現実主義者かと思えば、愚かしいまでの夢想家であったり。
全くと言っていい程あんたのことが分かんねぇよオイラには……。
―――鷹の如き眼光を放つ目は、瞼が落ち見えない―――
なあ、相棒?
この戦いで、ルーンはオイラが今まで見たことがねえ程輝いていたけどよ。
相棒の心を震わせていたのは、一体何だったんだ?
―――強き意志滲む顔は、力なく垂れ俯かれている―――
怒り?
悲しみ?
恐怖?
悦び?
それとも愛?
―――鋼の如き身体は、ぴくりとも動く様子が見えない―――
なぁ……相棒……。
実は
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