第七章 銀の降臨祭
第四話 貫かれる剣
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ままだと死ぬぞコイツッ!」
「エア・シールドが破られた?! 何の魔法だ!」
「クソックソッ! 一体何だこれは! 聞いてねえぞこんなの!」
アルビオン軍の前面を構成している反乱軍の中から、悲鳴混じりの怒声が響く。悲鳴や怒声を上げているのは反乱軍ではなく、それを指揮するアルビオン軍兵士。血を吹き出しながら地面を転がる兵士の身体は、手足の一部がかけていた。
血を流し、泣き叫ぶアルビオン軍の兵士を治療しようとした水の使い手の腕が杖と共に吹き飛んだ。
悲鳴と混乱が渦巻く七万のアルビオン軍は、姿を見せない謎の敵の攻撃により、
「もうっ! もう嫌だっ!! 一体何が起こっているんだっ!? これは一体何なんっぎゅビッ?!」
「ヒッ! ……どうなってるんだよ……何が……何が起きてんだよ一体ッ!?」
その歩みを止めていた。
「……何とか足を止めることは出来たか」
「有り得ねえだろ」
「何がだ?」
小さく頷きながら黒弓を下ろす士郎に、えらく平淡な声でデルフリンガーが呟く。
津波や地震のように止めることが出来ない存在の如き七万の軍勢が、混乱し動きを止める様を丘の上から見下ろしながら、士郎がデルフリンガーに声を向ける。
「この距離で、しかも一本も外さず当てるなんて有り得ねえだろ」
「何も難しい事じゃないぞ。中るのが見えたからな」
「……意味わからん」
「……良く言われる」
デルフリンガーの突っこみに、何処か肩を落とす仕草を見せる士郎。
「しかしまあ、何時もながら……っていうか何時も以上にスゲエな相棒。この調子なら何とか逃げきれるかもしれねえな」
「……っ……いや、やはりそう簡単にはいかないようだ」
「あん? どういうこと……って。あちゃ〜やっぱそう簡単じゃねえよな」
デルフリンガーから明るい口調で励まされていた士郎だったが、混乱状態だったアルビオン軍の変化に気付き表情を厳しく引き締める。
ただならない士郎の様子に戸惑うデルフリンガーだったが、反乱軍を置いて進軍を再開させたアルビオン軍に気付くと、苦々しい声を上げた。
「どうする相棒? 結構時間稼げたけど逃げるかい?」
「いや。まだ駄目だ」
撤退を進言するデルフリンガーに、士郎は首を横に振る。
逡巡することなく撤退を拒否する士郎に、デルフリンガーはアルビオン軍四万に対する対処を聞く。
「駄目って言うがな、どうすんだ相棒? また指揮官を狙って足止めするのか?」
「いや、進軍速度が速過ぎる。例え支持する者を除いても、この勢いを止めることは出来そうにない」
「随分ハッキリ言うな」
あっさりと降参する士郎に、デルフリンガーは意外そうに声を上げた。
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