第七章 銀の降臨祭
第四話 貫かれる剣
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「前衛にいるのは反乱軍か」
「……この距離で良く見えるな相棒」
シティオブサウスゴーダから南西に百五十リーグ離れた位置にある小高い丘の上。朝日が昇り世界に光が満ちていく中、士郎の強化した視力は、遥か彼方遠くから迫る軍勢をその視界に収めていた。
更には、常人ではその姿どころか、軍勢が揺らす地の轟きすら届かない距離でありながら、迫るアルビオン軍の前衛を構成する反乱軍の虚ろな瞳さえ、士郎の視力は捕えていた。
反乱軍の様子は、明らかに普通ではなかった。意思を感じさせない虚ろな目や足取り。シティオブサウスゴーダから休みなくここまで来たのか、全身が泥や埃で黒ずんでいた。
驚異の視力を持って三万の『反乱軍』を俯瞰する士郎の視界に、反乱軍ではない者の姿が映る。
それはアルビオン軍の士官だった。
徒歩での進軍を行う反乱軍の中で、馬に乗って指示をする姿は目立っていた。
指示は奴らが出しているようだな。
数は五十六。
距離は約十キロか。
問題は―――ない。
「投影開始」
士郎の左手に、漆黒に染まった弓が現れる。
「投影開始」
次の詠唱により現れたのは剣。
柄が短く刀身が長い……黒鍵と呼ばれる剣が、士郎を囲むように虚空から現れ地面に突き刺さる。
士郎の目の前に、測ったように等間隔で突き刺さる剣の姿は、まるで王の前で頭を垂れる騎士の如くで。
その数は反乱軍を指揮するアルビオン軍兵士と同じ五十六。
士郎はその内の一振りを掴みとり弓につがえる。
「……相棒……ちょっと聞きたいんだが」
「……何だ?」
ギリギリと弦を引き絞る士郎に対し、腰にはいたデルフリンガーが声を掛けた。
限界まで引き絞った姿のままの士郎に、デルフリンガーの躊躇いがちの言葉が掛けられる。
「……相棒って……その……」
「……どうした?」
ズケズケとした物言いのデルフリンガーが口篭る様子に、士郎の視線が下に移動する。
「……いや、何でもねえ」
「何だ。気になるだろ」
尻すぼみに消えていくデルフリンガーの声に、眉根を寄せる士郎。
訝しげに濁る士郎に、デルフリンガーの苦笑混じりの返事が向けられる。
「……この戦いが終わってからでいいや」
「……分かった。この戦いが終わってからだな」
小さく頷いた士郎は、視線を下から前へと移動させる。
視線の先には、
「……さあ」
反乱軍の中に混じる
「……戦争を」
敵の姿。
「始めよう」
「一体何処から飛んでくるんだっ!?」
「うるせえっ! それより早く水の使い手を呼べッ!! この
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