アインクラッド 前編
Deep psyche
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グが存在していたのだろうか。
そんなことを考えつつ、再び柄と鞘をくっつけて、指で鞘の真ん中辺りを突く。すると、武器のステータスを表示するウインドウが通常通りに開かれた。
固有名《蒼風》。武器カテゴリ《風刀》。真っ先に目に飛び込んだ情報が、マサキの驚きをさらに肥大化させる。
(刀ではなく《風刀》……。となると、刀身が存在しないのは仕様なのか? 確かめるには《風刀スキル》とやらを習得しなければならない訳か。……全く、茅場の奴がスキルも一緒に送ってくれさえすれば、こんな七面倒臭いことをせずとも済んだんだが……)
マサキは溜息をついて思考を断ち切った。情報が少なすぎる。今考えても、どの道答えなど出ないのだ。
マサキがウインドウを呼び出そうとして右手を振り上げると、乾いたノックの音が部屋にこだました。続いて、よく知る声がマサキの鼓膜を震わせる。
「マサキー、飯行こうぜー」
「……ああ、今行く」
マサキはドアの向こうのトウマにそう答えると、右手の刀をもう一度見やり、今は何の使い道もないそれを、アイテムストレージに収納した。
「……ハァ……」
まだ朝だというにもかかわらず体にのしかかってきた疲労感に、マサキは思わず今朝二度目の溜息をついた。体の中心部、胸の奥底がどんよりと重苦しく、そこから吐き出された息もまた、千鈞の重みを持っている。
マサキは外気に触れた瞬間に下へ下へと沈んでいく息をまたぎ、頭をぼさぼさと描きながらドアを押した。
――二〇二三年、三月六日。一万人を対象としたこのデスゲームも開始から五ヶ月を迎え、最前線は二十二層にまで到達した、ある朝の出来事であった。
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