第五話「祝福」
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はずれの質屋にだってある」
「しかしジルダールさん、わたしは旅のものです、旅人がそんな高価なものを持っていては夜盗に狙われます」
「ほう、それもそうですな、いやはや私としたことがとすると旅の手助けになるようなものでどうでしょう?わたしはあなたにとっておきのものがあるんですが」
「とっておきのもの?なんですかそれは」
「いいですか、馬です」
「ああ、それならおれはもうすでに自分の手足のような馬がいます」
「ふふ、わたしのいう馬はね、空を飛ぶんです」
「え?」
「あれは、わたしが三度目の旅に出た時のこと。北のもっとも天上に近い山の頂上で私は三日三晩祈りつづけたんです。すると神のお告げがあり、わたしは天馬を授かったのです」
「しかし、そんな大切なものを」
「いえ、そのときの神のお告げがこういうものだったんです」
「おまえは、それを一生懸命世話するがよい、だが絶対に乗ってはいかん。乗れば、たちまち天馬は怒り出しおまえを振り落として絶命させるだろう。時が来れば、それはある勇者の持ち物となり、お前も偉大な贈り物をした者として名を残す」
「うーん、神がそういうのならば喜んでお受けします」
「よかった、では、わたしは馬屋のほうにいってまいりますので、わたしの宮殿で休んでいてください」
この時、タチカゼは知らなかったがこの町長は、いまでこそ町の長などにおさまっているが昔は名の知れた船乗りであった。船乗りのシェリフといえば知らぬものはいなかった。
タチカゼは待っている間、刀を研ぐのに精を出した。タチカゼぐらいになると刀とぎから鍛冶の方法までなんでもわかる。本当はここの砦づくりだって自分がついていたいくらいだった。いやいっそのことこの町にゴブリンぐらいの襲撃では揺らぎもしない兵隊でも鍛えてやりたいほどだった。
タチカゼという若者は与えられる事よりも与える事のほうが得意なのだった。
刀はすぐに昔の光を取り戻した、いや、一度死地から帰ってきたせいか前にもまして光り輝いている。タチカゼはそのあと、贅沢なごちそうを振舞われ、三里離れた的をも射抜く立派な弓矢をもらった。そして翌日、もうすっかり元気になったタチカゼに神々しいばかりの天馬を町長は与えた。
「これが天馬」
「はい、さ、乗ってみてください」
タチカゼが天馬に乗ると天馬は少しだけタチカゼのことを見た。
その眼はタチカゼを見るや、自分を乗りこなす者と認めたようだ。天馬は一度いななくと空へと羽ばたいた。ぐんぐん飛翔してもこのあたりのすべてが見えた。
タチカゼが下りていくと、町長はいった。
「おゆきになりますか?」
「ああ、何から何までありがとう。関所の人たちにあなたから私が礼を言っていたと伝えてください」
「おお、確かに承りました」
タチカゼはペコリと頭を垂れるとぐんとそ
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