プロローグその二
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「どうしてだい?」
皆はそんな彼に尋ねた。
「あいつは貴族と裏で繋がっている。総督になったらあいつ等と結託するぞ」
「本当か!?」
「ああ、それもこのフィエスコの奴とだ」
彼はそう言って右手の屋敷を顎で指し示した。
「よりによってフィエスコの奴とか・・・・・・」
「何て野郎だ」
フィエスコはこのジェノヴァでも有数の権門である。それが為に平民達からは目の敵にされているのだ。
「じゃああいつは止めだ、冗談じゃない。では替わりに誰を立てる」
「一人適任の人物がいるだろう」
ピエトロはニヤリと笑って言った。
「?誰だ?」
一同はそんな彼に尋ねた。
「英雄だ」
「英雄?」
「そうだ、英雄だ」
ピエトロは一同に意味ありげに言った。
「英雄はいいが俺達平民の間にそんな凄いのいるかなあ」
「ああ、それもフィエスコとかを抑えられるような奴だろ。ちょっとやそっとじゃなあ」
一同は首を傾げて話し合った。
「おいおい、いるだろうが一人凄いのが」
ピエトロはそんな一同を笑いながら言った。
「だからそれは誰なんだよ」
「まさかあんたってんじゃないだろうな」
「えっ、俺!?」
ピエトロは自分を指し示されて思わず噴き出した。
「おいおい、いくら俺でも自分が総督に相応しいとは思っていないぜ」
「じゃあ早く言えよ」
「そうだそうだ、勿体ぶらず早く教えろよ」
皆彼を取り囲んで迫る。彼はそれを見てゆっくりと口を開いた。
「シモン=ボッカネグラの旦那だ」
「おっ、あの船長さんか?」
職人の一人がその名を聞いて言った。
「確かにいい船長さんだけどな。強いし優しいし」
水兵の一人が言った。彼は部下の間では評判がいいのだ。
「そうだ、あの人なら適任だろう?」
「確かにな。あの人なら貴族を抑えられる」
一同ピエトロの言葉に頷いた。
「これで俺達の天下だ」
皆ピエトロのその言葉に頷いた。彼等は貴族を激しく憎んでいた。そして自分達が街の権益を独占しようと考えていたのだ。
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