ALO編
episode1 灰色で楽しい日常3
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この話は俺がSAOから脱出し、まだ入院しながらリハビリしていた時期に母さんから聞いた話だからだ。
ここらへんは、話せば長い。面倒くさいほどに。だからまあ、簡単に言おう。
一、母さんは、いわゆる「お嬢様」として名家に育った。
二、親父と運命の出会い、しかし爺さんはそれを許さず。
三、母さん妊娠、結果二人で駆け落ち。
四、まだ俺が物心つかぬうちに親父他界。
五、母さん、気力と根性で女手一つで俺を育てる。
となるらしい。ちなみにここから、「六、俺SAOへ。入院費等に困窮した母さん、意を決して実家に助けを求める」となって今に至る。母さんもかなり無理をして、助けを求めたのはSAO開始一年後の十一月になってからだったらしく、「もう一年耐えられたら、頼らなくて良かったんだけど」と力無く笑っていた。
涙ぐましい親の努力なのかもしれないが、俺に言わせれば、「バカか」といったところだ。
俺は生きてることが第一だと思う。そのためだったら、プライドなんて喜んで捨てるだろう。俺が同じ立場だったら、別に頭を踏みつけられてニジニジされようが助けてくれと泣き付くことに、なんの抵抗も無いだろう。他人がやってたらちょっと引くかも知れんが。
まあそこは母さんにも譲れない一線というものがあったのだろうが、その母さんを見て育った俺がこうなったところを見るに、親父の遺伝子か。もしそうだとしたら俺は親父の印象が記憶にないことを心の底から感謝する。「父の威厳」というものは、そんな俺のプライドの無さとは別に一応男として信じておきたい年頃なのだ。
とにかく。
こうして俺は、ひっじょーに気まずい関係にある、名家の領主である実の爺さんと、今現在一緒に暮らしているのである。
◆
(ふぅ、あぶねあぶね……)
焦らず、急いだ結果は、ぎりぎりセーフと言ったところか。名家の辛いところで、時間がヤバいからと走って馳せ参じられないのは大変だ。ああ、高校時代、パン一枚咥えて通学路を全力疾走していた時代が懐かしい。
到着した際、時間は既に三十分を回っていたが、まだ爺さんは現れていなかった。
先に食事の場についていた母さんが、不安そうな顔を嬉しげにほころばせる。
絹のように美しい黒髪をかんざしで美しく纏め上げた姿は、まさに「良家のお嬢様」だ。
それは、いいのだが。
(やっぱ、痩せた、よな……)
母さんは、もともと太かったわけではないが、それでも頬には健康的な膨らみがあったものだ。それが今は、完全にそげ落ちてしまっている。今は、というか、正確には、俺が囚われていた二年間の間に、ということになるのだろう。全く、親不孝な息子なことだ。心の中でだけ、ごめんと謝りながら、自分の席に着く。ち
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