ALO編
episode1 灰色で楽しい日常2
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凌ぐだろう。
「だがまあ、所詮は犬っころよのう……」
再び飛びかかるようにひっついてくる仔犬。
それを巧みにかわしながら、今度は左の後ろ脚を捕まえて引っ張る。
「きゃうんっ!!!」
また、「ぺたん!」だ。
この仔犬に初めて会ったのは四日前。あてどもなく散歩に耽っていた俺に、何の前触れもなく挑みかかってきやがったのだ。恐らくその毛並の綺麗さからして飼い犬なのだろうが、俺は飼い主を見たことは一度もない。よく躾けられているところからしてもそれなりの家の子なのだと思われるが、散歩は放任されているらしい。
「これって見つかると怒られるんかねえ……」
一応俺としては遊んでいるつもりなのだが、これも動物虐待に入るんだろうか。
まあ言い訳は考えてはいるが。
とりあえず。
「おーらもういっちょ!!!」
「きゃう〜んっ!!!」
もう一発、後ろ足を引き抜いての「ぺたん!」。
ここまで今日は一度も犬コロに捕まってはいない。
最初の一日はその動きに翻弄されていたが、今ではこの通り。思うに、向こうの世界での経験がある程度はこちらに生きているということだろう。五回目の「ぺたん!」の時点で、奴はとうとう諦めた(というか、満足した)らしく、座り込んだままこちらを見つめて尻尾を振る。うん、今日はもう完勝だ。反射神経は、大分戻ってきてるな。
だが、本番はこれからだ。
「ワオン!」
「……今日も、きやがったな……!」
やってきたのは、この仔犬の親だろう、なかなかの立派な三毛色の犬。
体重は、三十キロはあるだろう。
「ってか、このサイズを放し飼いってそれはどーよ……?」
呟いて、頭を掻く。
この隠しボスが現れるようになったのは、昨日……つまりは、この仔犬をあっさりと屈服させられるようになってからだ。どうも、この仔にお手本を見せてやるつもりらしい。流石に年の功か、仔犬よりも素早く、見切りも上手い。前回は、二戦二敗だ。
しかし。
「今度は、簡単には負けねえぞ!」
「オゥン!」
一声吠えて飛びかかってくる、三毛犬。だが、その軌道は、目線から軌道を読む『見切り』によって俺には分かっている。素早くかわし、敵の隙を覗う…が、その巨体では簡単に後ろ脚は取れない。前足を払って、そこからか。
高まる鼓動のまま、体を躍動させること、数分。
結果は、またしても二戦二敗だった。
◆
俺の体は、生身の、何の変哲もない普通の人間のそれである。
……いや、何を言っているのかと正気を疑われかねない発言だが、結構本気である。
分かりやすい視点から言うならば、データで構成されたゲームの肉体ではない、とい
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