暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
ALO編
episode1 灰色で楽しい日常
[1/3]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 ヴヴヴヴ、ヴヴヴヴ、ヴヴヴヴ。

 三連の短いヴァイブレーションに現実に呼び戻されて、俺はゆっくりと目を覚ました。もともと眠りの浅いタチの俺はこれでも十分に覚醒できるし、そもそも今現在は学校にも仕事にもいく必要が無いため、正直朝起きる必要があるかどうかすら疑わしい。そう言えば、同じように朝に起きられなければ別にそれでよかったあの世界では、目覚ましを使うこと自体が稀だったな。

 時刻は、五時二十五分。
 キリの悪いこと極まりないこの時間には、理由があるが、まあ、それはあとでいいだろう。

 「ふあ……」

 古風に畳に直接敷かれた布団からむくりと起き上り、一度大きく欠伸。
 ついで両手を上にして伸びをしておく。

 それに合わせて、体中の関節がいい音を立てて起動するのを感じる。
 これが俺の一日の始まりの合図だ。

 (夢じゃ、ねえんだよな……)

 体が、実感を持つ。
 そのことに……そんな当たり前のことに感じる、違和感。

 何度目覚めても、この現実の違和感は消えない。

 「ふわ……さっみ……」

 季節は既に冬の真只中、十二月の半ばだ。あのデスゲーム、「ソードアート・オンライン」の世界から離れて、実に一カ月が経過したことになる。あの世界でなにが起こったのか。そして今俺はいったいなぜここにいるのか。そもそも、俺は本当に生きているのか。そんな訳のわからない混乱は、未だ俺の中で消えはしない。親も、総務省のお役人もそんなことを教えてはくれないのだから。

 そんな状況のせいか、ふと目が覚めたら、あの住み慣れた『冒険合奏団』のギルドホームにいるのではないか、と思ってしまうことすらあるあたり、「重症だなあ」と自分でも思う。

 (まあ、総務省のお役人連中の気持ちも、分からんじゃあないが、な……)

 もしここが元の世界、「現実世界」だとして、SAO内で何が起こったのかの情報は、出来る限り一部の人間に対してで留めておきたかろう。あんな誰が誰を殺したのかも分からんような中だ、下手に解明したらパンドラの箱を開けることになる。だから俺が「いったい何が起きたのか」と聞いても、「もう大丈夫」「解放されたのだ」「安心してくれ」としか聞かされなかったのだろう。

 ちなみに一番傑作だったのは、「ここは現実世界なのか」と真顔で尋ねた時か。当初の気が動転していた(どうやらSAOが終わった際にはそのアナウンスがゲーム内であったらしいのだが、その時気絶していた俺はそれを聞いてはいない)俺にしては切実な疑問だったのだが、周囲からすれば単なるキチガイか、或いはショックでおかしくなった人にしか見えなかったろう。もうちょっとでアタマの方の病院に連れて行かれるところだった。あぶねえあぶねえ。

 「うしっ、と…」

 まあ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ