第二幕その四
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のだ。そして今も貴族達の陰にはあの街の者達がその姿を隠している」
(それは本当かっ!?)
ガブリエレはその話に対し顔を強張らせた。
(確かに以前から金の出所が気になっていたが)
彼等には首謀者がいる。その者が資金を調達していたのだがあまりにも潤沢であった為に不思議に思っていたのだ。
「彼がそれを知り私の前に現われるなら・・・・・・。私は喜んでそなたの願いを叶えてやろう」
「有り難うございます・・・・・・」
アメーリアは父に対し頭を深々と下げた。
「それでは休むとしよう。もう遅い」
「はい」
二人はテラスから去った。ガブリエレは下を覗き誰もいなくなったのを確かめると下に降りて来た。
「とりあえずあの者はいずれ調べ上げるとして」
彼は官邸の中を見た。
「それでも我が父の仇であることには変わりないのだ。たとえ父が憎きヴェネツィアと結託していたとしても」
だが内心では迷いが生じていた。彼とてジェノヴァの人間である。ヴェネツィアが憎くない筈がなかった。そして彼等と結託する事がどれだけ恥ずべきことであるのかもわかっていた。
しかし長い間抱いていた憎しみは別である。その黒い炎はそう簡単には消えはしなかった。
官邸の中に入る。そして隠れながらその中を慎重に探る。
奥の部屋に彼はいた。テーブルの上に置いてある茶碗に壺の中の水を注ぎ込み飲んでいる。質素な生活を好む彼は茶を嗜まない。いつも水を飲んでいるのだ。
「ふう・・・・・・」
彼は水を飲み終えると溜息をついた。
「水でさえ苦いものに思える」
彼は椅子に座り呟いた。
「これが街を治める者の苦しみか。泉の水でさえ毒のようだ」
彼は疲れ切っていた。その全身を鈍い疲労が襲う。
「そして全て私のもとを去って行く。恋人も娘も。そして私はいつも孤独だ」
総督になってから今までの事が走馬灯の様に思い出される。しかしどれも寂しく苦しいものばかりだった。
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