第二幕その二
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らう」
「獣か、これはいい」
パオロはその言葉にクックック、と笑った。
「何がおかしい」
「いや、獣は鼻が利くからな」
彼は自分の鼻を指差して言った。
「それがどうした?御前が普通の人間より鼻が利こうが僕には関係無い」
「そうだな。ここにアメーリアがいる事を嗅ぎ付けるだけだからな」
彼はそう言うとガブリエレを見て卑しい笑みを浮かべた。
「それはどういう意味だ!?」
ガブリエレはその言葉にくってかかった。
「いや何、総督の寝室にいると言ったのだ」
「それは本当か!?」
彼はその話を聞いて顔を蒼白にさせた。
「俺はもうすぐこの街から高飛びする男だ。今更嘘など言うものか」
彼はその卑しい笑みをたたえたまま言った。
この時フィエスコがいたならば彼の言葉が嘘であると見破っただろう。だがガブリエレはそれを見破るにはあまりにも若かった。そして純真であった。
「そんな、では彼女は・・・・・・」
彼は声を震わせた。
「そうさ、毎夜総督の快楽の慰み者になっている」
彼はガブリエレを煽り立てる様に言った。
(上手く毒が回ってきたな。馬鹿な奴だ)
彼はガブリエレを煽り立てながら見ている。そしてその様子を楽しんでいた。
「おのれ・・・・・・」
ガブリエレは顔を上げた。その顔は怒りと憎しみで上気し真っ赤になっていた。
「それでどうするつもりだ?」
パオロはそんな彼に対して問うた。彼は即答した。
「決まっている、あの老いぼれに神の裁きを与えてやる!」
彼は激昂して言った。
「どうやってだ?」
パオロはそんな彼を嘲笑する様に言った。
「この官邸の中でか?それこそここが御前の墓場になってしまうぞ。よく落ち着いてからものを言うのだな」
「クッ・・・・・・」
あからさまな嘲笑であった。だがガブリエレは言い返せない。その通りだからだ。
「まあ誇りは死なぞ怖れないというがな。それでもいいというのなら俺は止めはしないがな」
それとなく彼を煽動する。
「しかし武器も無いのだぞ。よく考えてから何事も為すのだな」
そう言うと先程の短刀をさりげなくテーブルの上に置いた。
「だが俺はこれ以上は言わん。もうこの街から逃げ去らわなくてはならんからな」
彼はガブリエレに背を向けた。
「好きにするがいい。その誇りに忠実にな」
彼はそう言い残すと姿を消した。その顔は邪悪な笑みで満ちていた。しかしそれはガブリエレには見えなかった。
テラスにはガブリエレ一人だけが残った。彼は怒りと屈辱に身体を震わせながら立っていた。
「あの男がアメーリアを自分のものにしているというのか」
彼は声を震わせて呟いた。
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