33話「スレイプニル (3)」
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立ち尽くしたユーゼリアに、そっとクオリが寄り添う。まだちょっと乱れているユーゼリアの柔らかな美しい髪を整えながら、クオリは小さく、不安に包まれている銀髪の少女にだけ聞こえる声で言った。
「リアさん、大丈夫です。アッシュさんはお強いですから。わたしなんかより、ずっと。本当ですよ。だから、すぐ帰ってくるに決まってます。だって彼、貴女の護衛なんでしょう?」
「…うん。そうね」
静かに頷いたユーゼリアは、自分にも何かできるかも知れないと、魔法陣を馬小屋前の空き地に描いて、いつ何が起こっても大丈夫なようにスタンバイした。店主は一番離れたところで壁から頭だけを覗かせて、馬小屋の様子をうかがっていた。
――ごくり。
この一帯だけが妙に静かで、後ろの騒がしい市の雑踏が、なんだかユーゼリアには別世界のように感じた。一体誰がこんなところに魔獣がいると考えるだろうか。
何分たったか分からないが、それはちょうど、彼女たちの緊張が頂点に達した瞬間だった。
――ギイィ...
重たい音をたてて、馬小屋の扉が開く。
はっと2人は身構えた。が、すぐあとに見えた人影に、肩の力を抜く。
「アッシュ――…て、きゃああああ!!」
彼に駆け寄ろうとしたユーゼリアは、何かに気づくとズザザザザともといた場所まで後ずさった。クオリも顔を引きつらせて一歩退く。2人の気持ちを、意外なことに店主が、遥か遠いところから叫んだ。
「なんで生きてんだぁ!!?」
アシュレイの後ろにはスレイプニルがその頭を(もちろん鎌は避けるようにして)彼の肩にすりよせていた。アシュレイ自身も困ったような顔をしている。
「いやぁ、なんていうか…………懐かれた」
「うそぉぉおお!!?」
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