11 「男が泣いていいのは人生3回だけ」
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きや、父子そろって土下座し始めた。予想外の展開にたじたじになるナギだが、次の言葉を聞いてなんだか申し訳なささに泣きそうになってしまった。
「孫娘のエリザを助けていただいて、本当に、ありがとう……! 感謝してもしきれんッ。申し遅れた、わしはヴェローナ鍛冶屋の鍛冶長をやっておるグレゴワール・ヴェローナ。それから――」
「父のリシャールです。本当に、娘の命を救っていただいて、ありがとうございましたッ!」
慌てている当のエリザをよそに、額を地面に擦り付ける2人。大切な娘が実力もそぐわないのにリオレイアと遭遇したと聞いて、寿命が縮む心地だったのだろう。
ますます、あの時の躊躇の罪悪感が強まった。リーゼロッテは無傷で助けられたものの、エリザは1撃を浴びてしまったのだ。おそらくナギの躊躇の一瞬のせいで。
「……頭を上げてください。こちらこそ、自分がもっと早く行けば、エリザさんを無傷で助けられたかもしれないんです。むしろ、頭を下げるのは自分の方です。……申し訳、ありませんでした」
なぜあの時足が止まったのだろう。彼女達には親や、兄妹や、友人だっていたはずなのに。彼女達は、誰かの大切な存在であるはずなのに。
(寧ろ俺が身代わりに一撃受けるくらいが当然だろうに)
「いいえ! ハンター1年目の若輩がリオレイアと遭遇して生き残っただけでも奇跡です。それを、感謝こそすれ、謝罪など必要ありません…っ」
「その通りじゃ。ほんに、エリザを助け出してくれてありがとう」
「そんな……」
「ほれ、エリザも礼を言わんか」
「え? あ、はい……」
普段の奔放さは鳴りを潜め、しずしずと祖父の横へ並んだエリザがぺこりと頭を下げた。
「あのときは、ありがとう。…ございました」
「いいんだ、本当に。礼を言われるほど高尚な人間じゃないんだ。気にしないで。こちらこそ、怪我をさせてしまって…ごめん。誤って済まされる話じゃないことはわかってる。ヘタをすれば、君が……命を落としていたかもしれないということも。俺は、あの時君を――」
「もう、こっちがお礼言ってるんだから、素直に受け取っときなさいよ」
「こ、こら、エリザ!」
「そんなに後悔してるなら、ねえ、あたしに弓を教えてよ。いや、教えてください」
「え?」
父の静止の声も聞かず、エリザはしゃあしゃあと言った。一応敬語で言い直しているところを見ると、彼女にしては下手にでている方なのだろうか。
「もちろん怪我が治ったらだけど。それで、気を済ませてくれませんか?」
「エリザ……」
「あんたはあたしに弓を教えることで罪滅ぼし。あたしはまあ、今より強くなることで…お得だし」
グレゴワールのやや呆れた声に、だんだん慌て始めるエリザ。どうやら我ながらいい案などと思ってい
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