11 「男が泣いていいのは人生3回だけ」
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残念なことになっていた。
「いや、リーゼの命を救ってくれたお礼を言いたいと思いまして。僕はクルト・マイン。リーゼロッテの父です。あ、こちら家内のツェツィーリエ」
「先日は本当に、娘を救っていただいてありがとうございました」
上品に頭を下げた女性は、ふわふわしたゆるいウェーブを描く白金の髪の美人で、リーゼロッテの髪色は父から、髪質は母から受け継いだのだとひと目でわかった。可愛らしい顔立ちも母親似なのだろう。いや、良いことだ。将来美人になる。クルトには申し訳ないが。
ナギは咄嗟に立ち上がって2人に向き直った。
「あ、いえ、そんな…当然のことをしたまでですから」
(何が当然のことをしただ。一瞬躊躇したくせに)
自分で自分に毒を吐きつつ、表面上は謙遜した笑顔を浮かべてへこへこ頭を下げた。改めて名乗ると、話を切り替えたクルトが「失礼ですが…」と切り出した。
「こちらのお料理、どうでしたか? お口に合いましたでしょうか?」
「はい、もちろん……とても美味しくいただきました」
「ごちそうさまですニャ」
いつの間に降って湧いたルイーズが、膨らんだ腹をぽんぽん叩きながらげっぷをする。だからコイツは……、…もういいか。
それにしても、自分の娘と大して変わらない歳の青年に対して、随分礼儀正しい物言いをする人なのだと思った。ああ、そこもちょっとリーゼに似てるな、とも。
「それはよかった。実は、ここの料理は全て私が手がけたものなんですよ。あ、テーブルの端の方に行くと、ほかの方々にも手伝ってもらったんですけどね。うちは家内と『一楽亭』という料亭をやっておりまして。よろしければまたお越し下さい。サービスさせていただきますから!」
「ええ、是非お越しくださいね。リーゼも待ってますから! ね」
「え!? う、うん……あの、よかったら…」
そんなこと言われて断れるはずもなく。戸惑いながらも頷いた。
(俺はまたここに来れる、のか?)
それじゃあそろそろお暇をと席を立ったとき、今度は背の低い老人に目の前に立たれてたじたじになる。なんだか知らないが肩に狩猟槌のごとき大きさのハンマーを担いでいる老人の後ろには、これまた厳ついイメージの油で汚れたツナギを着ている男性。今度は右隣の娘が慌て始めた。
「あ、あれ、おじいちゃん? 父さんも!」
何故か緊張感が高まる場。慌てたエリザの様子から察するにこの小さい老人は彼女の祖父、後ろにいるのは父なようだが、なぜこんな竜に睨まれたような感覚を受けるのか。ナギは自分が何か地雷を踏んだかと無表情の下必死に考えていた。
「この度は…」
「え」
「ニャ゛」
「は、ちょ、おじいちゃん!?」
いきなりドスンと音を立てながらハンマーを取り落としたかと思い
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