11 「男が泣いていいのは人生3回だけ」
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「申し上げた通り、ハンター様がその子を倒してくださっておかげでこうしてユクモ村はまた平穏な日々を迎えられていたのですが、ジンオウガ以降それほど脅威たるモンスターがいなくなったからか、ハンター様達は1人、また1人とこの地を離れてゆきまして…。現在はリーゼロッテとエリザ、彼女の姉のオディルと、ロックラックから派遣されたカエンヌさまだけなのです。最近ではまたモンスターも何故か活性化してきていますし、仮にもハンターズギルドを抱える村。近隣の地方からも依頼は来ますが、この人数の少なさだけではとても回していけるものではありません。……ナギ様が手助けしてくださったら、こちらとしても大変喜ばしいことなのですが……」
「にゃふー…」
ルイーズも若干思うところはあるのだろう。だが、きゅっとナギの着物を握る小さな手からは、自宅にいたころの意思が変わらないことを感じられた。
ナギは腹を決めた。
「……申し訳ありませんが、それでも俺にはまだ、この村に住むということには遠慮させていただきます」
「そうですか…」
「ただ」
肩を落とした村長は、ナギの続けた言葉にぴくりと長い耳を動かした。動くのか。
「こうして宴会まで用意していただいた上に、村の危機を無視するのは、俺にはできません。…顔見知りの命の危機を、救える力があるかもしれないなら、なおさら」
エリザに一撃見舞わせてしまった後悔だ。いくら人と深く関わるのに恐怖を覚えようとも、それでもナギはこうして互いの名まで知ってしまった、同じ釜の飯まで食った彼らの危機を知りながらのんきに渓流の奥で居座っているなど、できなかった。もともと目の前で死にそうな命を見過ごして、夜安穏と寝れるほど豪胆でもない。
「ですから、危機があれば何か狼煙など上げてくれれば、すぐ行きます。飛んでいきます」
“飛んでくる”とは、文字通りデュラクに乗って飛んで来るだったが、まだそれを目で見てわかっていない村長は、ただただ驚いて頷くにとどめた。まさか、こちらの方からそんな申し出をするとは思ってもみなかったのだろう。
ハンターとして留め置くことはできなかったものの、十分な収穫だと思えた。
「ありがとうございますわ、ナギさま」
返事は頷くにとどめ、ぐいっと酒を煽った。
「ナギさん、ですかな?」
宴会も終盤に近づいたとき、後ろから声をかけられた。振り向けば、くせっ毛の赤味がかった金髪の、白い服と帽子をかぶった男性。年齢的には40代半ばといったところか。その見覚えのある髪色から、思わず左隣りに座る少女を見やった。
「あれ? お父さん」
案の定声をあげたリーゼロッテは、ふわふわした髪を揺らして首を傾けた。そんな娘に父は人の良さそうな笑みを深める。シェフのような帽子を取ると、生え際が
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