11 「男が泣いていいのは人生3回だけ」
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心地よかったですし、食事も、大変美味しくいただきました」
身を固くしながら答えた返事。ナギは内心で敬語ってこれでよかったっけとか他にも褒めポイントいっぱいあるだろとか自身にツッこんでいたのだが、村長は気に求めずにうんうん頷いて微笑んだ。
「うふふ、そう言ってくださって幸いですわ。わたくしも村長として鼻が高いもの。……では、この村にお住まいになるのは如何?」
「……それは、申し訳ありませんが…」
「ハンター様として、というわけではありませんの。まずは、ただの“人”として、お誘いしております。気に入ってくださったならなおさら、同じ地に腰を落ち着けませんか? 毎日温かいお風呂にも入れますし、食事も安定したものをいただけますわ」
渓流の中だけだと、何分食事も偏りますでしょう?
全て知っているかのようにカクンと首をかしげる竜人の女人に思わず頷きたくなるが、ふと頭をよぎった相棒の顔に、苦笑にとどめ首を振った。ナギの膝に乗ったルイーズが、ほっと息をついた。
(そうだ。デュラクもいるのに俺だけがこんなところで贅を尽くすなんて、できるわけないじゃないか)
「そうですか……残念ですわ」
本当に悲しそうに方を落とす村長に何とも言えない罪悪感のようなものを抱くが、「自分は悪くないこれっぽっちも悪くない」と念じることでどうにかやり過ごした。
「この村にハンターズギルドがありますのは、もうご覧になられて?」
「はい」
一体何を言い出すのかと思えば、村のちょっと危機的な状況についてだった。良心でここに居させる作戦か。
「あれが設置されたのはもう随分前になりまして、その頃ユクモ村はもっと大きな村で、ハンター様達も100人近くいらっしゃいましたの。ところが、とあるモンスターが渓流に現れて、半数以上のハンター様が殉職されました……」
「え?」
「モンスターの名はジンオウガ。村を捨てて行くかと腹を決めた時、あるハンター様が命と引き換えにジンオウガを倒してくださったのですが…。お名前はご存知?」
「いえ、初耳…です」
「これまでにない骨格を持ったジンオウガは、王立古生物書士隊によって“牙竜種”という新たな分類に分けられました。牙獣種ではない、飛竜でもない。獣竜種とも違う。現在判明している中で、唯一カテゴライズされている牙竜種が、ジンオウガです。もとは渓流の奥地に住処を持っていて、なぜここまで下ってきたのかはわたくしにもついぞわかりませんでした…。雷を纏うことから別名【雷狼竜】とも呼ばれ、数多のハンターを屠ったことから『人の敵うモンスターではない』と、【無双の狩人】という二つ名までつく始末」
「それはまた…」
随分大層な名前だこと。
憂いを秘める瞳は、しかし頭を振って再び穏やかな笑みをたたえた。
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