11 「男が泣いていいのは人生3回だけ」
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ーゼロッテがドアをノックしながら尋ねた。中から女性の声が返事をした。
「あら、おかえりなさいね、リーゼロッテ、エリザ。その方が例の?」
「はい。えっと……」
「…ナギ・カームゲイルです」
小さく頭を下げながら名乗ると、笑顔のまま家に招かれた。中には数匹のアイルーがいて、緑茶を持ってきたのもそのうちの1匹だった。 お手伝いさんみたいなものか、と納得する。チラチラとルイーズを気にしているのは、家のものを盗まれないか警戒しているのだろう。その点は事前に言い含めているから、多分大丈夫なはずだ。こいつも場はわきまえているだろう。きっと。そうだと思いたい。
「…失礼します」
「まあまあご丁寧にどうも。何やらその子が無理を言ったようで、申し訳ありませんでした。わたくしがユクモ村の村長ですわ。以後お見知りおきを」
他人の家に入るなんて何年ぶりか、思わず口をついで出た言葉にニコニコと村長が笑った。どうやら好印象らしい。サラッとエリザがやったという罠について見破るところをみると、彼女たちの性格を把握しているのかそれとも勘が鋭いのか。「その子」と断定したあたり既にリーゼロッテではなくエリザだと身元はバレている模様だ。ナギと座布団を1個開けて座っていたエリザが身を固くした。
「では早速宴会をと言いたいところなのですが、申し訳ありません、ナギ様がいらっしゃるのが思いの外早く、まだ準備が整っておりませんの。よろしければユクモ名物の温泉でもいかがでございましょう?」
「……温、泉」
「温泉ニャ!? 行くニャ! 行きたいニャ! ね、旦那!」
「ああ」
「じゃ、遠慮なく入らせてもらうニャ〜。…あ、もしかしてお金とか…」
「もちろん結構ですわ。お礼でございますから。番台に話は通しておくので、ごゆっくりおくつろぎくださいな。タオルなどは貸出をしておりますので、そちらも番台の方に申し付けていただければ」
「にゃっふー♪」
結局ナギが口を開いたのは「……温、泉」だけだったが、それでもルイーズが返事をすると同時に立ち上がったのを見る限り、どうやら楽しみにしているのは本当らしい。
「それじゃ、お言葉に甘えて。失礼します」
ぺこりと頭を下げて家を出ていく。笑顔で手を振って見送った村長は、笑みはそのまま2人の少女に向き直った。思わず2人の背筋が伸びる。
「それでは、報告を聞かせていただきましょうか?」
「「……はい」」
エリザは背筋に冷や汗をかいた。
***
「にゃふぅ〜、いい湯だニャ〜」
「何年ぶりの風呂か……」
着いたら早々広々とした湯に飛び込んだルイーズは、とろけるような声を出して水面に浮いていた。こいつは本当にメスか。いや失礼、オバハンだった。年齢はまだ8歳ぐらいのはずだが。
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