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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第三十三話 唯一無二の決着
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から解放されたかのようだ」

本来の剣の持ち主が櫻井の血筋である以上、彼女が、そしてその兄であろう人物が、その所有権を求めれば当然剣は彼女を選ぶ。ましてやそれを切り殺そうとした仮初の持ち手が逆に反撃を受けるのは当然といえた。結局自分は舞台の上で踊らされていただけなのだ。

「道化だな……俺は…」

初めからこの結末は決まっていたとしか言いようがなかった。総てが櫻井螢が勝つかのように仕組まれた道筋があるかのように。だからこそカリグラは気付いたのだ。これはどうしようもない酷く歪な物語なのだと。

「結局、これもあいつの筋書き通りってわけか……」

「それは、どういう―――」

櫻井がその言葉に疑問を言い切る前にカリグラは櫻井を吹き飛ばす。それと同時に力を失った緋々色金は砕け散る。

「なっッ―――!?」

吹き飛ばされた櫻井がまだ戦いが続くのかと失いそうになる魂を堪え必死に構えたその先には……

「うそ、でしょ……何で?」

カリグラに殺された筈のナウヨックスが、いやそれに似た形のナニかがカリグラを潰し、崩し、抉り、削り、砕き、壊し、そして蠢いていた。カリグラは苦痛に顔を歪めながらも自らが庇い、死を免れた櫻井に忠告した。

「アアァ―――いいか、櫻井……お前らが敵にしてるのは、どうしようもなく異常な奴らだ。神様なんてクソみたいな立場にいるやつ、それを内側から喰い殺せる獣、足元から這いずり回る悪魔――――――今いるこいつですら残骸と言えるかわいいもんだよ。だからな、お前等がもし本気で、そいつら斃すってんならテメエの血筋の剣を返してやる。手くらいなら貸してやる。気休めぐらいにはなるだろうよ……」

先ほどまで敵であったことなど関係ないとばかりに忠告をするカリグラ。事実そんなことは関係ない。どうせ自分は端役に過ぎない。もはや何も叶えることなどできない。それならば自分をいや総てを玩び、狂わせた悪魔どもにせめて言ってやるのだ。
お前等が何もできないと踏んだ俺はせめて最高の置き土産を置いてやると。

「いいか、あいつらは互いが互いに弱点でもあるんだ。身を喰らいあわせりゃテメエ等にも勝機があんだ。自滅させてやれ。目にもの見せてやれ。あいつ等の舞台を滅茶苦茶にしてやれ!!」

自分でも何を言っているのか理解できない。ただ、自分を喰らい殺そうとしているナニかがそういうものだと彼に教える。支離滅裂な感情と言葉を櫻井螢に伝えた彼は最後に櫻井螢を持っていた剣ごと、海へと突き飛ばし、ドイツ語で呟くように言った。

「Gewinnen Sie.」

お前たちは勝て、たった一言、その言葉を残して彼は消えることを選択した。何、とうにこの身は朽ち果てる運命。それが早まった程度のことに何を恐れる。

「よう。首が痛むのか、敵対者
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