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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第三十二話 紫電と灼熱
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だのは、あなたをここから救い出すこと。ハイドリヒ卿から引き剥がし、昔の少佐に戻ってもらうこと。私の願いは、それだけです」

エレオノーレはその決意に応えなかった。理解できないのか、呆れているのか、その眉根に寄せられた微かな皺には、明らかに戸惑いがあった。

「何故私が貴様に世話など焼かれねばならん。そもそも、貴様の願いとやらは不可能事だ。スワスチカでそんな真似はできん」

「ええ、分かってます。だから、ハイドリヒ卿を斃すんです。私は何処までもあなたを追いかける駄目な部下でありたいんですよ。だから今、私はこうしてここにいる。血で錆付いたあなたの理想に、再び輝きを灯せるように。ここから救うと決めたから」

「……戯けが。貴様は二つ、言ってはならんことを口にした。一つはハイドリヒ卿を斃すなどと、分を弁えん戯言を抜かしたこと。そしてもう一つは――――――よりにもよって、恋などと……私の忠を侮辱したことだ」

瞬間、この世界は灼熱地獄と化した。遊園地にある遊具は総て溶け落ち始め、地面すら溶岩のようになり始める。彼女はまさに言ってはならない禁句を口にしたのだ。

「その浅薄さ、罰を与えねばなるまい。残念だよキルヒアイゼン。次にあうとき貴様は狂っているかもしれんがな。だがそれも良し。逃がさん。何処にも行かせはせん。永遠に私の下で、私の機嫌をとりながら這い回れ」

「図星突かれて怒っちゃいましたか?」

「下らん。下らんぞ、貴様は何時までそのような戯言を言うつもりだ?いいだろう、枷を外してやる。これを知るのはハイドリヒ卿だけであり、実際に見るのは貴様が初めてだ」

「――――――ッ!」

そして、戦場の空気に満たされる。焼けた鋼鉄と油、硝煙の匂い。来る、とベアトリスは確信する。あの大火砲が牙を剥くと。だが、何かが違うと、そう感じていた。

「彼ほど真実に誓いを守った者はなく (Echter als er schw?r keiner Eide; )
彼ほど誠実に契約を守った者もなく (treuer als er hielt keiner Vertr?ge; )
彼ほど純粋に人を愛した者はいない (lautrer als er liebte kein andrer: )」

紡がれる詠唱もまたベアトリスの知る詠唱ではなかった。

「だが彼ほど総べての誓いと総べての契約総べての愛を裏切った者もまたいない (und doch, alle Eide, alle Vertr?ge, die treueste Liebe trog keiner er )
汝ら それが理解できるか (Wi?t inr, wie das ward? )」

そして、気付いた。先程エレオノーレは枷を外すとそう言った。それはつまり、これまで使っていた
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