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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第三十二話 紫電と灼熱
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た彼女が半世紀以上もスワスチカという殺戮儀式に加担していた不思議。

「昔は家族の蘇生や、消えた国家の再興といったところだと思っていたが……違うだろう。言ったように、貴様はどれだけ腰抜けでも戦士だ。死を何たるか、骨身に沁みて分かっている筈。立ち上がれぬものは捨てていけと」

終わったものを取り返すことなど出来ない。後ろを見ていては前に進めぬ。戦場の大原則であり、絶対のルール。

「死者蘇生はない。だからといって私と同じ英雄化(エインフェリア)が望みではない。今まさに私を否定しているのだから。分からぬ。解せぬよキルヒアイゼン。貴様は一体、何をなそうとしていたのだ」

「…………」

ベアトリスは即答しない。だが、ややあって問いに答えを出す。

「確かに私は、死んだ人を蘇らす気はありません。いっぱい死なせたし、いっぱい助けられなかった。悔しくはありますが、少佐の言うとおり、戦争とはそういうものです」

「そう、我々は殺すのが商売だ。死なないようにする術と、死なせるようにする術に長けている。生き返らす術など我等兵士の領分ではない。私もハイドリヒ卿も、厳密には一度たりとも死んでいない。生きながらに死を超えただけだ。そして貴様もそうなるだろう。だが、貴様はそれが嫌なのだろう?」

だからこそ、このヴァルハラを否定して、エインフェリアになることを拒んでいる。

「拒絶は好きにすればいい。嫌がる部下を連れて行くことなど慣れている。その決定を変える気は無い。なんなら先程の小娘も連れていっていいぞ。だが、そこで最初の疑問だ。考えれば考えるほど理解できなくなる。
命令だ、キルヒアイゼン。貴様が懐いていた望みを言うがいい。事によれば、叶えてやれるかもしれん」

「言ったはずです。私には敬愛する人がいると。その人、頭はいいはずなんですけどね。何ていうか、馬鹿ですね。総てにおいて秀でている人ですが、どうやら致命的な欠点があったようです」

今も棄てていないその願い。傲慢で、怖くて、信じられないくらい理想主義者の人間で。だからこそ、それは酷く凡庸で、ありきたりで、およそ彼女らしくないアキレス腱。

「恋は盲目――――――貴女は悲しくなるくらい殿方を見る目がありません」

悲痛を顔に浮かべながら何故こうなったと彼女は言う。

「全部あの人のせいだなんていいませんよ。綺麗事は言いません。私も所詮人殺しですから。だけど、ベルリン崩壊のとき、ハイドリヒ卿は何をしました?あなたは何を私達に命令しました?
何故、私達が――――――自国の民を殺さねばならないのです!!あなたも私も軍人でしょうッ!?」

彼等と一線を画くしていたはずだったのに。そう思っていたはずだったのに、と。

「あなたまでもが、堕ちた。だから―――だから私が望ん
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