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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第三十二話 紫電と灼熱
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てるって、分かってますか?」

兵士の剣が殺人の為である以上、命に届かない剣に意味は無いだろうと反論するベアトリス。それにエレオノーレは失笑する。

「何とでも言え。それで、どうした?もう来んのか?」

今、互いに開いている距離は二十メートル以上。完全に砲手の間合いと言える距離だった。

「言ったはずだ。私に抜かせれば終わるぞと」

「今なら、この距離でも抜かせませんよ」

速度において今のベアトリスは例外を除けば最速である。であれば抜刀を間に合わせはしないと彼女は断言した。
もとより速度で距離を詰めれる事も含め、地の利も彼女に味方している。射線を遮る遊園地の遊具は、障害物としても不意を突くのにも適していた。

「これだけで勝てるなんて甘っちょろい考えはしてませんけど、切り札を出させるような隙は絶対に見せませんよ」

一気に詰め寄り、剣を放つ。肩を、太腿を、肘を、指先を、髪を、次々と近づいては離れる様に軌跡を描きながらエレオノーレを追い詰めていく。

「話の続きをしようか」

にもかかわらず、彼女は焦りも、怒りも無かった。彼女にとって歯軋りどころでない屈辱を受けているであろうにも関わらず。

「そもそも何故、と今更ながらに思うのだが……貴様は何を求めて、黒円卓にいた?我々がハイドリヒ卿に打ちのめされ、引き抜かれたのは確か―――」

いきなり何を言い出すのかと思いながらも雷速剣舞のなかで剣戟を緩めずに答える。

「19、39年……その年の今日です。クリスマス・イブだって言うのに少佐がまた面倒なことを言い出して、私は迷惑したものですよ」

「別に男と約束があったわけでもあるまい」

「それは、そうですけどッ!」

少し声を荒げながらそう反応するベアトリス。だが、荒げているのは話の内容からではなく今の戦況からだった。手を緩めなどしていないにも関わらず、攻撃が段々と当たらなくなっている。

「それで、結局何なんですか!!」

「何、至極簡単だよ。始まりは共に巻き込まれただけだ。結果、恐れもしたし、躊躇いもした。最終的には是だとしてもな。貴様は元々、虫すら殺せぬ腰抜けだ。そうでありながら武門に生まれ、軍に入り、黒円卓のヴァルキュリアだ。見事だ、貴様の経歴は誰もが勇気と覚悟を褒め称えるほどのものだ――――――ここまでならな」

振り下ろされる剣を掻い潜り、エレオノーレはベアトリスの横をすり抜けた。その際に髪留めが切り飛ばされ、真紅の長髪が解かれた。
思わず見惚れ、追撃を止めてしまうベアトリス。そんな彼女を見ながら、エレオノーレは問いを投げる。

「問題はその後だ、キルヒアイゼン。貴様一体、何をスワスチカに(・・・・・・・・)願っていた(・・・・・)?」

軟弱者の弱者に過ぎなかっ
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