黄巾の章
第2話 「愛紗の目が紅く光っているのだ……」
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
…こんなときでも軍師として頭の中で打算が働いてしまう自分を嫌悪したのでしょう。
雛里ちゃんは優しい子、そして清純な子だから、それに耐えられなかったんだと思います。
でも……私は雛里ちゃんよりたぶん、心が汚いから。
だから、汚れ役は私の役目です。
「ひっく……ほんごう、さん」
「……なにかな?」
「……私たちは、っく、それでも」
「……うん」
「ひっく……それでも(ぐしぐし)」
涙が邪魔です。服が汚れますけど気にしてられません。
「ズズッ……それでも! 私たちは、たとえ罵倒されても、軍師を目指します! だって! だって、それが私のできる、ただ一つのことですから!」
私は叫びます。
ここが勝負だと思いました。
ここで、北郷さんに認めてもらえなければたぶん……二度と立ち上がれない。
私たちの意志も、志も、きっと、どこのどの陣営にいったとしても。
ここで北郷さんを認めさせられないで、なにかを成すなんて、絶対にできっこない!
「…………」
北郷さんは黙っています。
その目はつぶったまま。
眉を寄せているわけでも、眉間にしわが寄っているわけでもありません。
ただ、目を閉じ――そして開きました。
「……後悔しない?」
「っ! しま」
「しません!」
!?
私が叫ぼうとした瞬間、雛里ちゃんが顔を上げて叫びました。
そう、やっぱり雛里ちゃんも同じだった。
私たちの志は、こんなことで倒れるほど柔じゃないんです!
「そっか……」
盾二さんは優しい目のまま、ポン、と私たちの頭に手を置きました。
「なら……ひとつだけ、俺に誓ってほしいことがある」
「……なんですか?」
私が覚悟を決めて、北郷さんの言葉を待ちます。
例えどんな言葉でも、私の、私たちの心は折れません!
「……命を粗末にしないこと。自分も、他人も。それを俺に誓えるかい?」
優しい瞳。慈愛の眼差し。
そう言った北郷さんが……私達には、とても眩しくて。
ああ……この人こそが。
私と雛里ちゃんは、その場に膝で立ち、盾二さんに臣下の礼を執りました。
「我が名は、姓は諸葛、名は亮、字は孔明……真名は朱里と申します。私は貴方に従い、この命尽き果てるまで……終生の忠誠を誓います!」
「我が名は、姓は鳳、名は統、字は士元……真名は雛里と申します。私も貴方に従い、この命尽き果てるまで……終生の忠誠を誓います!」
私たちは、その日━━生涯の主君を得た。
―― 関羽 side ――
ご主人様の天幕から、孔明や鳳統の泣き声が聞こえた次の日。
「いや、愛紗。人聞き悪い言い方はやめてくれ」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ