黄巾の章
第2話 「愛紗の目が紅く光っているのだ……」
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―― 鳳統 side ――
私と朱里(孔明)ちゃんは泣いていました。
私たちはとんでもないことをするところだった。
ちょっと勉強して、水鏡先生に天才だとか百年に一人、いえ、二人の逸材だ、と言われ、調子に乗っていたんです。
私たちは何でもできる、例えこの乱れた世の中をも救える。
そう本心から思っていました。
天の御遣い――北郷盾二さんの話を聞くまでは。
「……ごめんな」
北郷さんが私たちを抱きしめながら謝ってきます。
ちがいます。悪いのは私たちです。
私たちがそんな覚悟もなく、ただ声をあげ、注意を惹き、自分達の知識を示せば……きっと私たちを重用するはず。
そう考えて、あのとき声を上げたんです。
でも、それは浅慮な考えでした。
「ヒック……ヒック……」
私たちは……何もわかっていなかったんです。
私たちの策が成ること……それは誰かの命を奪うことだって意味。
私たちの策が破れること……それは仲間の命を失う事だって意味。
私たちの言葉一つで……何人、何十、何百、何千、そして何万という命が失われていくという意味を。
そしてその……家族や仲間や恋人に、生涯恨まれるのだということを。
「……怖いかい?」
北郷さんの優しい声が聞こえます。
さっきまでの恐ろしい、まるで泰山府君の怒号のようだった怒りの声。
それが今は優しいお兄さんの声になっています。
「ヒック……はい」
「うっく……はい」
私と朱里ちゃんが答えます。
きっと朱里ちゃんも泣きながら、頭の中ではいろいろ考えています。
後悔、悔恨、焦燥、そして……恐怖。
「その怖さを忘れちゃいけない。それは命を預かる怖さだ。それを忘れたとき、命令するものはただの外道となる」
北郷さんの言葉に、私の頭は二つの意思が働いています。
一つは感情、もう一つは……打算。
感情では北郷さんの言葉は、深く心に染みました。
今までの慢心を打ち砕き、優しく包み込んでくれるその暖かさ。
でも、もう一つの心が、私自身を嫌悪させます。
それは……こんな状況でも、私は軍師として世に出ることを諦めていないという打算です。
その為にはどうすればいいか……頭の隅でどうしたら関心が買えるか、そのことを考えています。
そして、その浅ましさを感情の心がさらに自分を情けなく思わせ……
「ヒック……あああああああああっ!」
また、私を泣かせてしまうのでした。
―― 孔明 side ――
雛里ちゃんがまた泣き出しました。
でもさっきまでの恐怖による泣き方ではありません。
きっと自分の心の醜さを…
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