第一物語・後半-日来独立編-
第二十八章 目指す場所へ《4》
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涯を閉じる、実に美しいものだ。
思えば家族をこの手で殺してしまった日から、本当の自分を失ってしまったのではないかと思う。
今生きているのは中身の無い脱け殻なのかもしれない。だから仲間が差し伸べた救いの手を握ることせず、死ぬことを選んだのだろう。
救いの手を握らなかった時の、仲間達の悲しみを秘めたあの表情が脳裏に投影された。
あの時はすまなかった。だが、私がいなくなれば私の事でもう苦しむことも悲しむことも無い。
この場にいない仲間達へ、口に出さず心のなかで伝える。
口に出してしまったら決心が揺れ動いてしまうような気がしたからだ。そうなってしまったら、辰ノ大花の皆にまた迷惑を掛けてしまう。
太ももに載せた拳を強く握り、最後くらいは強くあろうと思った。
そんな彼女の元にふと風が吹き、海の匂いを運んで来た。
鼻をくすぐるこの匂い。懐かしさを感じた。
「そう言えば家族とでしか海に行ってなかったな、それもたった一回。
……こんな力さえ無ければ、私達は……」
自然と言葉に、恨みと言う力が加わる。
竜神。辰ノ大花に代々祀られている竜を統べる神。上位の神として有名であり、竜神の前には如何なる竜であってもひれ伏すと言われている。
強大な力を持つ竜神は、委伊達家の初代先祖から今現在にまで人に宿り、その力を与える。
この世界が創造がされる前の神世の時代。竜神は神々の戦いのなかで消滅寸前まで傷付いたために、現在でも人に宿らなければ生きて行けない。そのお礼として力を貸している。
しかし誰にでも力を貸すわけではない。弱い者には当然貸すわけもなく、例え強くても貸すわけでもない。
先祖はどんな者に力を貸すのかと竜神に問うた事があったららしいが、そんなことも解らない奴には力は貸せないと言われそれまでだったらしい。
竜神の初代宿り主は竜神との間に子を授かった。どのようにしてかは詳しい記録は無く、しかしその証拠として委伊達の者達は皆、少量ながら竜神の血を引いている。
だが自分は少量ではなく、身体に流れる血の殆どが竜神のものだ。
このこともあってか、今は自分が竜神を宿している。
全てはこの力が原因だ。神を身に宿すことは身に余る力を宿すことと同じだ。
神の力は人では扱いきれないものであり、神を宿すことはそれだけの実力があることと一般には認識されるが、自分はそうではない。
それを証明するように自分は竜神の力を抑えることが出来ず暴走し、家族と黄森の者達を殺めてしまった。家族を殺めてしまった中等部二年生の時、黄森の者達を殺めてしまったのは去年の冬の時のことだ。
黄森の者達を殺めてしまったことにより、黄森は不安定な宿り主は神州瑞穂にとって不利益にしかならないと言った。そしてあまりに多い死亡者の結果、完全に暴走してしま
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