第一物語・後半-日来独立編-
第二十八章 目指す場所へ《4》
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人族を除く人族、天人族、翼人族、獣人族、魔人族、霊族、破族。背の低いの高いの、若いの老いたの、人であるもの人では無いもの、細いの太いの、髪が短いもの長いもの、優しそうなもの怖そうなもの、その他色々。
日来にいる彼らのことを、一生を終えても忘れないように自身に刻む。
誰であっても、今の彼らの姿は勇姿として目に映る。
一回りし終わる頃、各地に設けられた監視用映画面によるアナウンスが流れる。
声の持ち主は、この日来を総括する機械人形“日来”だ。
『連絡致します。前方に空間の裂け目出現、約三十秒後に通り抜ける計算で航行致しますので、その時間内に戦闘の準備を終えて下さい。
裂け目を抜けて直後は防御壁による防御を行い、学勢と社交員の突入を確認した後、日来は戦闘体勢へと移ります。本作戦においての変更は覇王会から直々に報告するとのご連絡を頂きましたので、本作戦の確認等のご連絡は覇王会の方へお願い致します』
日来の船首の先。眩い光が射し込むと同時に開いた空間に向かって、ただ真っ直ぐに日来は突き進む。
穴から風が吹くように、裂け目から風が流れ込んで来た。冷たく、塩の匂いが混じった風を。
この匂いにセーランは心覚えがある。
辰ノ大花は東の青竜を司る地域だ。そのため奥州四圏の内、最も海が近く風向きによっては潮風を運んで来るのだ。
あの裂け目の先に辰ノ大花はある。そう確信し、これから始まる戦い前の最後の一言を言い放つ。
「良き知らせを運んでやるぜ、この俺達がな――!」
巨大な日来の全形が光のなかへと吸い込まれ、白の外へと消えた。
この時をもって、日来には穏やかな日々は二度と来ないと誰もが覚悟した。
日の目を見なかった彼らの存在は人の世界にどれだけの影響を与えるのか、それはこれから知ることになることだ。
日来が通り抜けた裂け目が閉じる前。裂け目の向こうで、突如として無数の砲撃の音が轟いた。
●
青の空には通常よりも多い戦闘艦が雲と共に空を流れ、この辰ノ大花の地を警護している。
何時もだったら平穏な一日に過ぎないこの時も、今の自分に取ってはとても貴重なものだ。
委伊達家の屋敷の一室で、正座のまま顔を上げ、部屋のなかから空を見上げている少女が一人いる。
畳を敷かれたこの部屋のなかは監視されており、屋敷のなか全ても同じように監視されている。
檻のなかに閉じ込められたような気分だ。
笑えてきた。
これから死ぬと言うのに、こんなにも物事を捉えることが出来るのかと宇天覇王会会長、委伊達・奏鳴は笑みを漏らす。
「とうとうおかしくなってきたかな」
死の恐怖からどうにかなってしまったのか、そう思った。
せめてもの慈悲として、夕日が沈む頃に解放を行うことを黄森は約束してくれた。沈む夕日と共に自分の生
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