第一幕その九
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内心呟いていた。
(何時までもそうやって権力の座にいられると思うなよ)
憎々しげにそう呟いた。
(今に思い知らせてやる。わしの長年の恨みと復讐をな)
だがそれに気付く者はいなかった。彼は一人シモンを睨み続けていた。
(あの老人・・・・・・)
シモンもそれに気付いていた。彼をチラリ、と見る。
(恐ろしい程似ている。だがもう死んでいる筈だからな)
そう思い直しガブリエレへ顔を向けた。
「ガブリエレ」
「はい」
彼は答えた。
「そなたはとりあえず収監する。暫くは大人しくしておくがいい」
「わかりました」
ガブリエレは衛兵達に連れられてその場を後にする。アメーリアはそれを心配そうに見送る。
「さて、後は・・・・・・」
パオロへ目をやる。
「パオロ」
「は、はい」
顔が蒼ざめているのを不思議に思った。だがそれは放っておいた。
「そなたに今回の誘拐事件の真犯人の捜査を命じる。そなたに市民の厳粛な法と名誉を委ねよう」
「わかりました」
パオロはそれを了承した。断ることは出来なかった。
「その者はこの部屋にいるという。ならば捜査は容易な筈。おそらく今私の話を聞き顔を青くし震え上がっていることだろう。そう、今この場所でな」
パオロはそれを聞きながらアメーリアをチラリ、と横目で見る。彼を睨みつけている。
「私はその者を決して許しはしない。白日の下に曝し懲罰を与えてやる。そしてその者に言おう」
そこで彼は一息置いた。
「呪われよ!とな。この者には必ずや神の裁きが加えられる」
そう言うとパオロを見た。
「そなたも繰り返すがよい。そして必ずや犯人を見つけ出すと誓え」
「わかりました・・・・・・」
彼は青くなった唇で歯が鳴るのを必死に抑えながら言った。
「呪われよ!」
彼はこの時恐ろしくなった。まさか自分で自分に呪いをかけることになろうとは。
(恐ろしい・・・・・・)
彼は心の中で呟いた。アメーリアはそんな彼を睨み続けている。
「犯人よ、今ここにいるのなら姿を現わせ!」
ガブリエレが叫んだ。
「そうだ、逃げていないで出て来い!」
それを受けて貴族の議員の一人が言った。
「呪われよ!」
彼等が叫んだ。パオロはそれを聞きながら自分の身に破滅の時が近付いている事を感じていた。
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